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【症例解説】1ヶ月で急速に増大した愛犬の首のしこり。細胞診の限界と外科切除の必要性

愛犬の体に急にしこりが見つかると、「悪い病気ではないか」「手術が必要になるのか」と、飼い主様は大変な不安を抱えられることと思います。
今回は、実際に当院で経験した首回りにできて急激に大きくなったしこりの症例をもとに、獣医師がどのような視点と根拠に基づいて検査・診断を行い、治療方針を決定しているのかを詳しく解説します。

ご来院の経緯と症状


トイプードルの首(耳の下あたり)にしこりがあることに気づき、約1ヶ月という短期間で急速に大きくなったとのことでご来院されました。ご自宅では元気や食欲はいつも通りあり、嘔吐や下痢などの体調不良は見られませんでした。

獣医師の思考プロセス:まずは細胞診で相手を知る

  • 負担の少ない検査からスタート:体表のしこりに対して、獣医師がまず行うことが多いのが「細胞診(針生検)」です。
  • 細胞診とは:しこりに細い注射針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で観察します。麻酔が不要で愛犬への負担が少ないのが大きな特徴です。
  • 今回の検査では、皮膚などの表面組織由来の小型細胞が、お互いに密着して塊を作っていることが分かりました。
  • 初期の予測:細胞の形や核にガン特有の悪性を示す顔つきは認められず、「良性の腫瘍が疑わしい」という有力な手がかりを得ました。

なぜ「良性疑い」でも手術に踏み切るのか?

細胞診で良性の可能性が高いと出たにも関わらず、全身麻酔を伴う腫瘍切除手術をご提案したのには明確な理由があります。

  • 細胞診の限界:細胞診はあくまでしこりの一部を見る検査です。見えない部分に悪性細胞が隠れている可能性を完全に否定することはできず、確定診断には塊ごと切り取って調べる組織検査が必須となります。
  • 臨床的な動き:約1ヶ月で急速に拡大しているという事実は見過ごせません。放置すればさらに巨大化し、皮膚が破けて出血や化膿をしたり、周囲の組織を圧迫したりするリスクがありました。

安全な麻酔への配慮と最終的な病理検査結果

  • 術前検査の徹底:シニア期のワンちゃんであったため、手術前には血液検査と胸部レントゲン検査を入念に行いました。
  • レントゲン検査で気管が潰れやすい状態は確認されましたが、血液数値などに麻酔をかけられないほどの異常はありませんでした。
  • 点滴などでしっかりサポートをしながら、安全に配慮した全身麻酔下でしこりの完全切除と、同時に歯石除去(スケーリング)を実施しました。
  • 切除したしこりを専門機関の病理検査に出した結果、診断名は「基底細胞腫(毛芽腫)」でした。
  • これは毛の元となる細胞から発生する良性の腫瘍です。
  • 腫瘍の境界ははっきりしており、手術で完全に取り切れていること、そして悪性の所見はないことが確定しました。
  • 術後の経過:傷を気にする様子もなく、本当に安心できる結果となりました。

首のしこりとして考えられる類似疾患と鑑別

首回りにしこりができた場合、獣医師はそれが皮膚の浅い場所にあるのか、筋肉などの深い場所にあるのかを重視して様々な疾患を鑑別します。

  • 深い場所のしこり(甲状腺腫瘍):首の奥深くに固定された硬いしこりの場合疑います。大きくなると気管を圧迫することがあります。
  • 浅い場所の悪性腫瘍(扁平上皮癌など):悪性度が高まると細胞同士がバラバラになり、細胞診での鑑別が困難になることがあります。
  • 浅い場所の悪性腫瘍(悪性黒色腫):細胞内に特徴的な色素を持つことが多いですが、色素を持たないタイプもあり注意が必要です。
  • 浅い場所の悪性腫瘍(皮膚リンパ腫):通常の炎症細胞よりもはるかに大きい、核の形がいびつな大型リンパ球が多数観察されます。
  • 浅い場所の悪性腫瘍(肥満細胞腫):どんな見た目にもなり得るため要注意です。細胞内に特徴的な顆粒を持ち、悪性の挙動を示すことが多いため早期発見が重要です。
  • 腫瘍ではないしこり(肉芽腫性炎):異物や深い感染などが原因の強い炎症です。ガン細胞に見られるような極端な細胞の異常がないことで区別します。

まとめ:早期発見と検査の重要性

愛犬のしこりは、見た目や触った感覚だけでは良性か悪性かを絶対に判断できません。今回の症例のように急速に大きくなっても結果的に良性であることもあれば、小さくても悪性であることもあります。

不安な場合はご自身で様子を見すぎず、まずは「細胞診」を含めた検査を動物病院でご相談されることを強くお勧めします。

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English Summary

Finding a rapidly growing lump on your dog’s body can be very concerning. In this case, a toy poodle presented with a neck mass that grew significantly over just one month. We initially performed a fine-needle aspiration (FNA) cytology, which is a low-stress procedure. The cytology suggested a benign epithelial tumor, as there were no obvious signs of malignancy.

However, we proceeded with surgical removal under general anesthesia for two main reasons: cytology has its limitations and cannot rule out hidden malignant cells, and the rapid growth posed risks of rupture or pressure on surrounding tissues. The final histopathology confirmed a “Basal Cell Tumor” (Trichoblastoma), which is benign. The surgery successfully removed the entire mass with clear margins, and dental scaling was also performed simultaneously.

When evaluating neck lumps, veterinarians must differentiate between various conditions, including deep tumors like thyroid masses, and surface malignancies such as squamous cell carcinoma, melanoma, cutaneous lymphoma, or mast cell tumors. If you notice any lumps on your pet, early veterinary consultation and cytology are highly recommended.

中文总结

在狗狗身上发现迅速长大的肿块,往往会让主人们感到非常焦虑。在这个病例中,一只玩具贵宾犬的颈部肿块在短短一个月内迅速增大。我们首先进行了细针穿刺细胞学检查(FNA),这是一种对狗狗负担较小的检查方法。细胞学检查显示没有明显的恶性肿瘤迹象,初步怀疑是良性的肿瘤。

尽管怀疑是良性,我们仍然建议在全身麻醉下进行手术切除。原因有两个:首先,细胞学检查有其局限性,无法完全排除隐藏的恶性细胞;其次,肿块的迅速生长带来了破裂或压迫周围组织的风险。最终的病理检查证实这是一个良性的“基底细胞瘤”(毛芽瘤)。手术成功地将其完全切除,边缘清晰,排除了恶性的可能,同时还进行了牙齿洁治(洗牙)。

在评估颈部肿块时,兽医需要鉴别多种疾病,包括深部的甲状腺肿瘤,以及浅表的恶性肿瘤(如鳞状细胞癌、黑色素瘤、皮肤淋巴瘤或肥大细胞瘤)和非肿瘤性的炎症。如果您发现宠物身上有任何肿块,强烈建议尽早进行兽医咨询和细胞学检查。