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【軟部外科・症例報告】重篤な尿道閉塞に伴う急性腎障害に対する会陰尿道瘻造設術

今回は、10〜11歳齢のオスの患者さんの外科症例をご報告します。
「ぐったりしている」「泡を吹く」「歩かない」「トイレに長くいるが尿が出ていない」という極めて切迫した主訴で来院されました。本日は、命に直結する重篤な尿道閉塞と、内科的治療が限界を迎えた際に行う外科的介入について、事実に基づき論理的にお話しします。

検査結果と「外科的適応」の判断

初診時(第1病日)の血液検査では、BUN 95.9 mg/dl、クレアチニン 5.62 mg/dlという極めて重篤な急性腎障害(尿毒症)に陥っていました。尿検査ではストルバイト結晶が確認され、顕著なタンパク尿と潜血が認められました。

術前の超音波検査において、膀胱は極限まで拡張し、膀胱壁は今にも破裂しそうなほど薄くなっている危険な状態でした。直ちに緊急処置として膀胱穿刺を行い、ほぼ血液成分のみの尿を80ml抜去しました。この穿刺自体、膀胱破裂を招きかねない極めて緊迫した局面でしたが、これにより一時的な減圧に成功しました。しかし、尿道先端部での物理的な閉塞によりカテーテルの通過は不可能であり、内科的解除が困難であることから、直ちに外科的介入によって尿路を確保する適応と判断しました。

もしこのまま様子を見たら(放置の残酷なリスク)

尿道閉塞は「様子を見る」ことが絶対に許されない疾患です。放置した場合、数日以内に確実に死に至ります。排尿できないことで体内に尿毒症の毒素が充満し、激しい吐き気と全身の苦痛が持続します。最終的には膀胱が破裂するか、不可逆的な腎不全を引き起こし、極めて残酷な最期を迎えることになります。

基礎疾患による麻酔リスクと当院の鎮痛プロトコル

本症例は、重度の尿毒症と水腎症(尿管拡張)を併発しており、麻酔リスクは極めて高い状態でした。術中の致命的な血圧低下を防ぐため、静脈点滴に加えて術中ドパミンを使用し、循環動態を厳密に維持しました。

さらに、当院では局所浸潤麻酔を徹底して併用しています。全身の機能が低下している患者さんに対し、痛みの伝達経路を局所で物理的に遮断することで、全身麻酔薬の必要量を下げ、安全域を論理的に広げています。

選択した術式とその根拠、および致死的合併症

  • 選択した術式:会陰尿道瘻造設術
  • 外科的根拠と独自の工夫:閉塞の原因となりやすい細い陰茎部尿道を取り除き、より太い骨盤部尿道を直接開口させることで、物理的な閉塞経路を根本から排除します。さらに本症例では、傷が癒合した後も、この子が会陰部を長期的に舐めることで生じる「医源性の尿道狭窄」を防ぐため、陰茎周囲の皮膚を傘のように配して傷口を隠し、保護する特殊な造形を行いました(北里大学小動物第二外科 准教授 岩崎聡美先生の術式を適応)。
  • 想定される致死的合併症:
    • 尿道狭窄:新たに造設した開口部が癒着・狭窄し、再閉塞を引き起こすリスクがあります。
    • 細菌性膀胱炎:尿道が短くなることで外部からの細菌感染リスクが上昇します。
    • 術後出血:血管豊富な部位であるため、持続的な出血が生じるリスクがあります。
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術後管理と「痛みを絶つ」ための徹底介入

第2病日の血液検査では、BUN 28.9 mg/dl、クレアチニン 1.16 mg/dlと劇的な数値の改善を認め、カテーテルからの排尿も良好でした。

  • 術後の超音波所見と疼痛管理:術後、尿を抜去した状態で改めてエコー検査を行ったところ、膀胱壁全体が石灰化を起こして分厚くなっている状態が確認されました。この状態に対し、第2病日には膀胱洗浄時に長期間作用する局所麻酔薬(マーカイン)を注入し、膀胱の疼痛管理を行いました。術直後は痛みのあまりうずくまっていましたが、これらの処置と尿毒症の改善により、第2病日の夜には自力で立ち上がる姿が確認されました。
  • 抗生物質戦略:抗生物質は第一選択としてアモキクリアを使用しています。同時に提出した尿の培養同定感受性試験の結果が返ってきた際、耐性菌が確認されれば即座に最適な薬剤へ変更する体制をとっています。
  • 夜間監視の限界:当院の夜間は「スタッフ不在」となります。ペットカメラで遠隔監視を行い、異常検知時は院長が駆けつけますが、移動には約30分を要します。数分を争う急変には対応しきれない物理的限界があることを明記します。

退院後のご自宅での厳格なケア(ご家族へのお願い)

早期退院後は、ご家族自身の手による以下の管理が命綱となります。

    • 自宅皮下点滴の実施:腎臓の保護と、結晶成分を洗い流す(ウォッシュアウト)ために極めて重要です。

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  • 専用療養食(ストルバイトケアスターター)の徹底:再発防止のため、指定食以外は一口も与えないでください。
  • 会陰部創の局所管理:尿道の癒着や狭窄を防ぐため、患部にヘパリン類似クリームとクリゲンを直接塗布し、厳密な管理を行っていただきます。

当院の外科体制と紹介ポリシー

本症例のような軟部外科は広く対応可能ですが、尿管結石摘出や輸血が必要な重度貧血症例などは、命を最優先とし二次施設(高度医療機関)へご紹介します。

院長からのメッセージ

今回の症例は、術前の膀胱穿刺から術後の疼痛管理、そして将来を見据えた皮膚の造形まで、一分一秒を争う判断と緻密な技術の連続でした。当院では感情論ではなく、事実と論理に基づき、最大限の治療を提供いたします。退院後のケアはご家族の協力が不可欠ですが、共にこの子の命を守り抜きましょう。


Case Summary

This case report details the emergency surgical intervention for a 10 to 11-month-old male cat suffering from a severe, life-threatening urethral obstruction and secondary acute kidney injury (uremia). Due to the inability to resolve the obstruction medically and the presence of severe calcification in the bladder wall, a perineal urethrostomy was urgently performed. To minimize anesthetic risks in this highly compromised patient, local infiltration anesthesia was strictly utilized alongside rigorous intraoperative blood pressure management. A specialized surgical technique, utilizing surrounding preputial skin as a protective “umbrella,” was employed to prevent postoperative stricture caused by self-trauma. Following intense postoperative pain management with intravesical bupivacaine and stabilization of renal values, the patient was discharged early to reduce stress. Long-term management relies on strict at-home subcutaneous fluid therapy, a dedicated prescription diet, and rigorous local wound care by the family.

病例摘要

本病例报告详细记录了一只10至11个月大的雄性猫的急诊外科手术。该患犬因严重的尿道阻塞导致危及生命的急性肾损伤(尿毒症)。由于无法通过内科导尿解除阻塞,且超声检查显示膀胱壁出现严重钙化,我们紧急施行了会阴尿道造口术。为降低该高危病例的麻醉风险,手术中严格结合了局部浸润麻醉,并进行了严密的术中血压管理。为了防止术后因舔舐造成的医源性尿道狭窄,手术采用了利用阴茎周围皮肤作为“伞”状保护层的特殊皮瓣技术。在术后通过膀胱内注入布比卡因进行严格的疼痛管理,并确认肾脏指标显著改善后,安排患者尽早出院以减少精神压力。长期的预后高度依赖于家庭内的严格护理,包括居家皮下输液、严格的处方饮食控制以及细致的局部伤口消毒和药膏涂抹。