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〜ゴールデン・レトリーバーと「血管肉腫」という病〜

ゴールデン・レトリーバーという犬種は、本当におっとりとしていて、心優しい子ばかりです。診察室でも優しく尻尾を振り、私たちスタッフにまでその無償の愛を分けてくれます。

だからこそ、彼らが重篤な状態で病院へ駆け込んでくるたび、獣医療に携わる私たちもまた、やり場のない悲しさと無力感に包まれます。今回は、ゴールデン・レトリーバーに非常に多く見られる「血管肉腫」という病気について、先日私が出会ったある優しいご家族のお話とともに、少しだけ書かせてください。

「昨日まで元気だったのに」〜沈黙の病、血管肉腫〜

血管肉腫は、血管の内側の細胞から発生する非常に悪性度の高い腫瘍です。この病気の最も恐ろしいところは、「腫瘍が破裂するまで、ほとんど無症状である」という点です。お腹の中(特に脾臓など)でひっそりと大きくなり、限界を迎えて腫瘍が破裂した瞬間に、お腹の中で大量出血を起こします。

  • 昨日まで普通にご飯を食べていたのに、突然立てなくなる
  • 歯茎や舌が真っ白になる(貧血)
  • ハァハァと呼吸が浅く、苦しそうになる

これらはすべて、お腹の中での出血により、急激に貧血とショック状態に陥っているサインです。元々優しいご家族が多いからこそ、このあまりにも突然の出来事にパニックになってしまい、どうしていいか分からず、手遅れな状況の中でもがいてしまうことが少なくありません。

ある心優しいゴールデンと、ご家族の決断

先日も、1週間前から自力で立てなくなってしまったというゴールデンの子が来院しました。いつものドッグフードは食べられなくなり、お肉やさつまいも、パンなどを少し口にする程度だったそうです。

来院時、すでに呼吸は荒く苦しそうで、エコー検査をするとお腹には大量の液体(腹水)が溜まっていました。お腹に針を刺して確認すると、引かれてきたのは赤黒い血液でした。血液検査でも重度の貧血と、血を止めるための血小板の著しい減少が見られました。お腹の中で腫瘍が破裂し、出血が止まらない状態だったのです。

一刻を争う事態でした。「少しでも早く、できることを見つけてあげてほしい」。その一心から、私は救急病院への移送について「まごまごしている時間はありません」と、半ば怒るような強い口調でご家族を急かしてしまいました。あまりの厳しい現実に戸惑われたことと思いますが、ご家族はしっかりと手を取り合い、必死にこの子のための道を模索してくださいました。

救急病院でのCT検査で突きつけられたのは、脾臓だけでなく、すでに腎臓や肺にまで腫瘍が転移しているという、あまりにも非情な現実でした。

お腹を開けて脾臓を摘出すれば、一時的に出血は止められるかもしれません。しかし、すでに全身に転移がある中で、果たして痛い思いをして大きな手術をすることが、本当にこの優しい子とご家族の「幸せ」に繋がるのだろうか。私たち獣医師も、常にこうした正解のない問いに深く悩み、考えさせられます。

病院からは安楽死の選択肢も提示されたそうですが、ご家族は最終的に、この子を住み慣れたご自宅へ連れて帰るという決断をされました。

何もできなかった私たちへの「ありがとう」

結局のところ、私たち獣医療チームは、あの優しい子を病から救い出すことはできませんでした。それにもかかわらず、後になってお母様から「あの時、厳しく転院を促してくれたことには感謝している」というお言葉をいただいたとき、私は胸が締め付けられる思いでいっぱいになりました。パニックになってもおかしくない状況で、愛犬のために最善を尽くそうとされたご家族の深い愛情と強さに、救われたのは私たちの方でした。

未来へのお願い〜元気な今だからこそできること〜

この病気は本当に恐ろしく、完全に防ぐことは現代の獣医療でも困難です。それでも、現在ワンちゃんと暮らしているご家族の皆様へ、心からのお願いがあります。

  • 定期的な画像診断を:血液検査だけでなく、元気なうちから定期的な超音波(エコー)検査を受けてあげてください。早期発見の可能性が少しでも高まります。
  • 元気な今、ご家族で話し合いを:万が一、治らない病気になったとき、どこまで治療をするのか。パニックの中で後悔の残る選択をしないための、それが最大の備えになります。

最愛の家族を見送ったばかりの方に、「もし次があるなら」などとお話しするのは、配慮に欠ける言葉だったかもしれません。しかし、何もできなかった私に「ありがとう」と頭を下げてくださったお母様の姿を見たとき、やり場のない悔しさと共に、一つの思いが痛いほどに胸に湧き上がりました。

「いつかまた、心の傷が少し癒えて、新しい家族を迎える日が来たら。その時はどうか、最初から一緒に、その子の健康を守らせてほしい」と。

それは、今回助けられなかった私のせめてもの願いであり、これほど愛情深いご家族の未来を、次こそは絶対に守りたいという祈りでもあります。悲しいお別れの場ではなく、いつかまた診察室で新しいワンちゃんを真ん中に囲み、「今日のワクチンもよく頑張りましたね」と、何気ない日常の中でご家族と一緒に笑い合える日が来ることを、私は心から願っています。

お空へ旅立った優しいあの子の冥福を心から祈りつつ、いま目の前にいる犬たちとご家族の時間が、1日でも長く、後悔のない穏やかなものでありますように、私たちはお手伝いを続けてまいります。


Summary / 摘要

[English]
This post discusses the heartbreaking reality of hemangiosarcoma, a silent and aggressive tumor common in Golden Retrievers. Reflecting on a recent patient, it highlights the immense difficulty families face when confronted with sudden, devastating choices. Though veterinary medicine has its limits, the deep love and strength shown by the family left a profound impact on us. We urge all dog owners to schedule regular ultrasound check-ups and discuss end-of-life care while their pets are still healthy. Our deepest prayer is to protect the future of these loving families and to one day share happy, everyday moments—like routine vaccinations—laughing together with them and a new furry family member.

[中文]
这篇文章讲述了血管肉瘤(一种在金毛寻回犬中常见且无声的恶性肿瘤)令人心碎的现实。通过回顾最近的一位病患,文章突显了家属在面对突然且毁灭性的选择时所经历的巨大困难。尽管兽医学有其局限性,但家属展现出的深沉的爱与坚强给我们留下了深刻的印象。我们强烈建议所有养狗的家庭,在狗狗健康时定期进行超声波检查,并提前探讨临终关怀。我们最深的祈愿,是守护这些充满爱的家庭的未来,并期待有一天能在诊室里围绕着新的毛孩子们,在打疫苗等日常琐事中与家属们一起欢笑。