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〜挿管・回路・リークチェック・ベンチレーター・ETCO₂・アラーム・心電図まで、現場で再現できる説明〜

麻酔の準備(看護師の指導)完全版

挿管・回路・リークチェック・ベンチレーター・ETCO2・アラーム・心電図まで、現場で再現できる形でまとめました。

このページで伝えたいこと


麻酔準備は「挿管できたら終わり」ではありません。酸素が確実に供給されていること、換気が成立していること、回路にリークがないこと、ベンチレーターが患者に合って動いていること、そしてモニタが“正しく取れていること”まで含めて準備が完了します。
多少設定を間違えても立て直せますが、「起動しているのに酸素が来ていない状態」だけは絶対に作ってはいけません

目次


術前の安全評価(麻酔前に決めること)

麻酔は全身に作用し、肝臓や腎臓で代謝・排泄され、心臓や呼吸を抑制します。だからこそ、手術に入る前に「どこが弱点になりやすいか」を見ておきます。一般的には血液検査や胸部レントゲンなどで全身状態を把握し、必要に応じて心エコーなどで心機能も評価します。ここで得られた情報は、麻酔薬の選択や投与量、輸液の計画、モニタリングの優先順位にそのまま反映されます。

麻酔の現場では「急に変化する」ことが起きます。だからこそ、術前に得られる情報は“保険”ではなく“設計図”です。術前評価でリスクが高いと判断できるなら、麻酔の深さを必要最低限にする、換気を早めに安定させる、体温を落とさない、血圧低下を早めに拾う、といった優先順位が明確になります。

挿管に入る前の準備(喉頭鏡・チューブ・カフ)

まず喉頭鏡は「そこにある」だけでは意味がありません。必ず点灯するか確認します。電池切れ、接触不良、噛み合わせ不良で点かないことがあるため、ダイヤルを回し、接点を動かして確実に点灯させます。挿管時に点かないと、その数十秒が低酸素の原因になります。

気管チューブは必ず複数サイズを準備します。基本は中央サイズと前後0.5mm刻みの3本です。猫では体格差が小さいため、4.0と4.5を必ず用意します。目安としてメスは4.0、オスは4.5になりやすい一方、短頭種や肥満では調整が必要です。サイズを迷って時間が延びること自体が、麻酔リスクになります。

挿管前にチューブ自体を確認します。カフが膨らむか、戻るか、リークがないかを必ずチェックします。カフが漏れると換気できず、逆に入れすぎると気管粘膜を損傷します。カフの硬さは耳たぶくらいを目安にします。膨らませすぎると気管壊死や気管破裂の原因になるため、「入れれば安心」ではなく「必要最低限で密閉する」という感覚を共有します。

挿管のポイント(時間短縮と安全確認)

挿管時は舌をガーゼで把持します。素手では滑り、時間がかかります。舌根部を圧迫し、声門をしっかり視認してから挿管します。見えないまま押し込まないことが大原則です。挿管が長引くと低酸素、迷走神経反射、徐脈のリスクが上がるため、「安全に素早く終える」ことが目的になります。

チューブの深さは重要です。深く入りすぎると片肺挿管になります。浅すぎると体位変換で抜けます。肩甲骨前縁を超えない位置を意識し、分岐点を目安に仮固定します。最終的な微調整は術者が行います。

挿管後は必ず位置確認を行います。胸郭の動き、バッグの抵抗、聴診、可能であればETCO2で確認します。食道挿管は初期には気づきにくいため、確認手順を固定し、誰が行っても同じ順番で確認できるようにします。挿管後はチューブを固定し、バイトブロックを入れます。麻酔が浅い状態で噛み切られると致命的になるため、必ず行います。

回路の基本(open/close、手動/自動)

ここから換気の準備に入ります。挿管直後はopen回路で手動換気を行います。open回路ではAPLを開放し、バッグを使って胸の上がりと抵抗を直接確認します。これは、換気できているかを機械ではなく自分の手で確認するためです。最初にここを飛ばすと、チューブ位置異常や回路の問題を見逃したまま自動換気に移ってしまうことがあります。

麻酔器を使うときは、回路が絡んでいないか必ず確認してください。折れ、ねじれ、引っかかりは換気不全の原因になります。接続部は押しながら少し引っ張るような感覚で、ぐらつきがないか、キャップや接続が緩んでいないかを確認します。これは練習が必要ですが、必ず一人で再現できるレベルにします。

リークチェック(手動で圧をかけて判断する)

次にリークチェックです。リークチェックのときは回路をクローズにします。操作は手動に切り替えます。自動のままだとベンチレーターが正しく作動しないだけでなく、圧の評価そのものが正確にできません。クローズ回路にすると回路内に空気が充満するので、出口を塞いで圧をかけ、一定の圧が保てるかを見ます。リークがあれば酸素や空気が外へ漏れていきます。

まず酸素流量を上げます。圧が30程度になったら酸素を0にします。30秒待って、圧が大きく下がるようならリークがあります。圧が5程度までしか下がらない、またはほとんど下がらないならリークは小さいと判断できます。リークがある回路は危険なので交換します。

重要:挿管前、動物に接続する前は必ず回路をオープンに戻してください。クローズのままだと肺に空気が入り続け、肺胞破裂など圧外傷を起こす危険があります。リークチェックのときだけクローズ、接続前は必ずオープンです。

ベンチレーター設定(換気量・回数・吸気時間)

次にベンチレーターの設定です。ベンチレーターを使用する場合、換気量を設定します。送気量は体重×10〜20mLが目安です。3.4kgなら40mL前後に設定します。小型犬や猫では過換気になりやすいので、最初は低めから開始します。換気不良や低酸素があるときは、換気量や換気回数を調整しますが、数字合わせではなく患者の胸郭の動きとETCO2を見ながら決めます。

吸気時間を上げすぎると胸腔内圧が上がり、静脈還流が減って血圧が下がります。血圧が下がったときは、吸気時間を短くしたり、呼吸回数を調整したりして循環への負担を減らします。吸気時間は最大でも0.5秒程度までという感覚で覚えます。3.4kgの猫なら、換気量は70mL程度までに抑えるという上限の意識も持っておきます。

ベンチレーター設定後は、回路をクローズにして自動に切り替えます。ただし、リークチェックをベンチレーター任せにしません。手動close回路で圧がかかるかを確認し、自分の手で抵抗を感じます。圧がかからない場合は、チューブカフ、回路接続、弁、バッグを順に確認して原因を追います。リークがないことを確認してから自動換気に切り替えます。

モニタリング(SpO2・血圧・ETCO2・心電図)

ベンチレーターを自動に切り替えた後こそ、モニタリングが本番です。SpO2は舌で測定します。値がおかしいときは、まずプローブ位置を確認します。血圧計は適切なサイズのカフを選び、輸液ラインのない肢で測定します。うまく測れないときはカフを交換し、測定不良を機械のせいにしない姿勢が重要です。

ETCO2は換気だけでなく循環と代謝も反映する指標です。数字だけでなく波形も一緒に評価します。ETCO2が低い場合、まず過換気を疑い、換気量や呼吸回数が多すぎないかを確認します。同時に血圧低下による肺血流低下も考えます。ETCO2が高い場合、低換気を疑い、換気量不足、呼吸回数不足、回路閉塞、チューブ位置異常を確認します。ETCO2が急に下がった場合、回路外れ、チューブ抜去、重度低血圧などをまず疑います。ETCO2はSpO2より先に異常を示すことがあるため、優先的に確認します。

覚えておく考え方
過換気になるとETCO2は低下し、静脈還流が減って血圧が下がることがあります。低換気になるとETCO2は上昇し、麻酔が深く見えて実は換気不全という状態になることがあります。換気と循環は必ずセットで評価し、ETCO2・血圧・胸郭の動きを同時に見て判断します。

心電図は形を丸暗記するよりも、電気がどちらに流れているかをベクトルとして理解します。赤と緑の位置関係が重要で、色そのものより配置が大切です。波形が大きく取れないときは、まず電極の位置や接触不良を疑い、機器が壊れていると決めつけないようにします。

アラーム対応(ハイプレッシャー/ロープレッシャー)

アラームは「壊れた」の合図ではなく、「原因を教えてくれる」合図です。ハイプレッシャーは圧がかかりすぎている状態で、回路の折れ、閉塞、チューブの問題などを疑います。ロープレッシャーは圧が足りない状態で、リーク、回路外れ、接続不良、そして酸素が来ていない可能性を疑います。

ここで最も大切なのは、ベンチレーターが動いていても酸素が来ていなければ意味がない、ということです。ガスサプライの問題は、酸素ボンベが空、元栓の問題、供給ラインの問題、設定の見落としなどで起きます。ここは「怒られない」「落ち着いて一つずつ確認する」領域ですが、同時に最も危険な領域です。起動しているのに酸素が来ていない状態だけは絶対に作らない、という優先順位を徹底します。


まとめ(麻酔準備のゴール)

麻酔準備のゴールは、挿管できることではありません。換気できることでもありません。回路を理解し、open/closeと手動/自動を適切に切り替え、リークチェックを手で確認し、ベンチレーター設定を患者に合わせ、ETCO2・SpO2・血圧・心電図が“正しく取れている”状態を作ることです。そして異常が出たときに、次の一手が即座に出る状態を作ることが、本当の麻酔準備です。

よくある確認ポイント


  • リークチェックは必ず「手動+クローズ」で行い、終わったら必ずオープンに戻します。
  • 挿管直後はopen回路で手動換気を行い、胸の上がりと抵抗を手で確認します。
  • ベンチレーターは「動いている」より「患者に合っている」を優先し、胸郭・回路圧・ETCO2を同時に見ます。
  • ETCO2やSpO2が取れない状況は軽視しません。まず原因を追い、危険な状態として扱います。
  • 起動しているのに酸素が来ていない状態だけは絶対に作らないという優先順位を徹底します。