わんちゃんの「ドライアイ」
乾性角結膜炎(KCS)
大切なご家族であるわんちゃんの目が、なんだか赤かったり、目ヤニが多かったりすると、とても心配になりますよね。その症状、もしかしたら「乾性角結膜炎(かんせいかくけつまくえん)」、通称「ドライアイ」かもしれません。この記事では、わんちゃんのドライアイについて、原因から最新の治療法まで、詳しく解説していきます。
わんちゃんの「ドライアイ」、乾性角結膜炎(KCS)とは?
乾性角結膜炎(KCS)とは、涙の量が減ってしまうことで目の表面が乾き、様々なつらい症状を引き起こす病気です。涙は目を潤すだけでなく、ホコリや細菌から目を守る大切な役割を持っています。
主な症状
- ベタベタした黄色っぽい目ヤニがたくさん出る。
- 目が充血して赤くなる。
- 目をショボショボさせたり、痛がって開けにくそうにする。
- 進行すると、角膜(黒目)が黒っぽくにごったり、血管が伸びてきて視力が落ちてしまうこともあります。
原因は様々ですが、一番多いのは、自分の体を守るはずの「免疫」が、なぜか涙を作る「涙腺」を攻撃してしまう「免疫介在性」というタイプです。
診断方法:涙の量を測る「シルマーテスト」
わんちゃんのKCSは、「シルマーテスト」という専用の紙を使った簡単な検査で診断します。目盛りのついた検査紙を下まぶたに1分間はさんで、涙でどれくらい濡れるかを測定します。この数値と症状を合わせて、どのくらい目が乾いているかを判断します。
正常
1分間で15mm以上
軽度
11mm~14mm
中等度
6mm~10mm
重度
5mm以下
治療について:原因に合わせたお薬の使い方
治療の目標は、「①涙の量を回復させること」と「②細菌感染を防ぎ、目をきれいに保つこと」の2つです。原因によって使うお薬や治療法が異なります。
1. 一番多い「免疫の異常」が原因の場合
免疫の暴走を抑えて、涙腺が再び涙を作れるようにする治療が中心です。
- 使うお薬:
- シクロスポリン眼軟膏(商品名:オプティミューンなど): 1日2回、目に直接塗ります。効果が出るまで6週間ほどかかりますが、症状が良くなっても自己判断でやめず、生涯続けることが大切です。
- タクロリムス点眼液(商品名:タリムスなど): シクロスポリンの効果が十分でない場合に検討します。1日2回点眼します。
- 補助的なお薬:
- 人工涙液やヒアルロン酸点眼液: 涙の量が回復するまで、目が乾かないように潤いを補給します。
- 抗菌薬の点眼液(商品名:ロメワンなど): 黄色い目ヤニが出ている(細菌感染が疑われる)場合に、1日3回ほど使います。
2. 「神経の異常」が原因の場合
涙を出す指令を出す神経を、お薬で直接刺激します。
- 使うお薬: ピロカルピン点眼液(商品名:サンピロなど)
- 【重要】このお薬は目にさすのではなく、ご飯に混ぜて飲ませます。目に直接入れると強い痛みを伴うためです。
- 量: 体重10kgあたり1滴を1日2回からスタートし、副作用(よだれ、吐き気、下痢)がないか見ながら、獣医師の指示のもとで慎重に調整します。
3. 涙の回復が難しい「重症」の場合
生まれつきや手術後などで、お薬を使っても涙の回復が見込めないケースです。この場合は、涙の代わりになるものを、とにかく頻繁に補給し続けることが治療目標となります。
- 人工涙液やヒアルロン酸点眼液の頻回点眼: 1日に8回以上など、こまめに点眼し、目の表面が乾く時間がないようにします。防腐剤の入っていない製品が目に優しくおすすめです。
- 人工涙液の眼軟膏: 何度も点眼するのが難しい場合、より長く潤いを保てる軟膏タイプで点眼回数を減らす工夫もできます。
- 自宅でのケア: 目の周りの毛を短くカットしたり、温かい蒸しタオルでまぶたを温めて、涙の油分を出しやすくしてあげるのも効果的です。
飼い主様へのお願い(Key Point)
- 治療は根気強く、生涯続けます: 特に免疫が原因の場合、良くなったからといってお薬をやめると再発します。獣医師の指示通りに治療を続けましょう。
- 点眼スケジュールは正直に相談を: 「1日に8回の点眼は難しい」など、生活スタイル的に難しい場合は、遠慮なく獣医師に相談してください。ご家庭で続けられる治療プランを一緒に考えましょう。
- 病院に行く前の点眼: 涙の量を正確に測るため、診察前の最低2時間は点眼をお休みするのが望ましいです。
最近の新しい治療法(2020年以降のアップデート)
従来の治療で効果が不十分な場合、以下のような新しい選択肢も出てきています。
- より強力な免疫抑制剤: 従来のシクロスポリンよりも高濃度の製剤や、新しい作用を持つ点眼薬が開発されています。
- 再生医療: わんちゃん自身の血液から作る「自己血清点眼」や、組織の修復を促す「幹細胞治療」など、涙腺の働きそのものの回復を目指す先進的な治療も行われ始めています。
KCSは長く付き合っていく病気ですが、根気強く治療を続けることで、わんちゃんのつらい症状を和らげ、視力を守ってあげることができます。
何か分からないことや不安なことがあれば、いつでもかかりつけの獣医師にご相談ください。