猫の会陰尿道瘻(PU)|「詰まる」を繰り返す子のための手術
尿道閉塞(おしっこが出ない/出にくい)を繰り返す猫ちゃんに行う代表的な手術「会陰尿道瘻(Perineal Urethrostomy; PU)」について、
実際の診療でよくある経過に沿って、できるだけわかりやすくまとめます。
この記事でわかること
・なぜ「詰まる」のか/なぜ手術が選択肢になるのか
・会陰尿道瘻(PU)ってどんな手術?
・手術当日~退院後のケア/注意点/起こりうる合併症

大切なおことわり
この記事は一般的な説明です。猫ちゃんの体格、詰まりの原因、尿路の状態、既往歴によって最適解が変わります。
「うちの子はどう?」は、検査結果を見ながら一緒に決めましょう。

目次
1)「おしっこが詰まる」って、どういうこと?
2)会陰尿道瘻(PU)が必要になる代表的なケース
3)会陰尿道瘻(PU)手術の内容(わかりやすく)
4)手術当日~入院中にすること
5)退院後のお世話(ここがいちばん大事)
6)合併症と、受診が必要なサイン
7)長期的に再発を減らすコツ
8)よくある質問(Q&A)
1)「おしっこが詰まる」って、どういうこと?
猫ちゃんの尿道(おしっこの通り道)はとても細く、特にオス猫は途中が細く曲がっています。
そこに砂(結晶)や小さな結石、炎症でできた粘液・血のかたまりが詰まると、
急におしっこが出なくなったり、少量しか出なくなったりします。
詰まった時に起きやすいサイン
・トイレに何度も行くのに出ない/少ししか出ない
・鳴く、落ち着かない、隠れる、触ると怒る
・食欲低下、嘔吐、元気がない
・お腹が張っている感じ(膀胱がパンパン)
尿道閉塞は放置すると、短時間で腎臓や心臓に負担がかかり、命に関わります。
「トイレに行くのに出ない」は救急の合図です。
2)会陰尿道瘻(PU)が必要になる代表的なケース
多くの猫ちゃんは、点滴・鎮痛・導尿(カテーテル)・食事療法などで安定します。
それでも、次のような状況では「根本的に詰まりにくい出口を作る」ことが強い選択肢になります。
手術を検討しやすい状況
・短期間に閉塞を繰り返す(「また詰まる」)
・導尿カテーテルが通りにくい/すぐ再閉塞する
・尿道が狭くなっている(狭窄)疑い
・膀胱内に砂状の沈殿が多く、閉塞リスクが高い
・家での導尿が限界で、猫も家族も疲弊している
この子も、閉塞・血尿・導尿困難が続き、膀胱の中に砂状の所見が見られ、手術(会陰尿道瘻)を選択肢として検討する流れになりました。
[oai_citation:1‡1311-01岡部 アビ.pdf](sediment://file_00000000365c7206bac8c521db11e52e)
3)会陰尿道瘻(PU)手術の内容(わかりやすく)
会陰尿道瘻(PU)は、細くて詰まりやすい部分(陰茎部尿道)を避けて、より太い部分(骨盤部尿道)を新しい出口として作る手術です。
つまり「詰まりやすいボトルネックをショートカットする」イメージです。
手術でやること(ざっくり)
・会陰部(お尻の下)側からアプローチして尿道を露出
・尿道を太い部位まで確保し、皮膚と縫い合わせて新しい尿道口を作る
・必要に応じて膀胱洗浄(砂や血の塊を減らす)を併用
誤解されやすいポイント
・PUは「膀胱炎が治る手術」ではなく、「詰まり(閉塞)を起こしにくくする手術」です。
・膀胱炎体質や結晶体質そのものは、食事・水分・環境で管理が必要です。
4)手術当日~入院中にすること
閉塞の子は、手術に入る前に「体の中を安全な状態に戻す」ことがとても重要です。
入院中の主な管理
・点滴:脱水・腎臓の負担・電解質の乱れを補正
・鎮痛・吐き気止め:痛みや不快感を抑える
・導尿/膀胱管理:尿がしっかり出る状態にする
・抗生剤:状況により適切に(漫然投与は避け、必要性を見極めます)
この子も、導尿が難しいタイミングがあり、膀胱穿刺や点滴、膀胱洗浄などで状態を整えながら手術を検討しました。
[oai_citation:2‡1311-01岡部 アビ.pdf](sediment://file_00000000365c7206bac8c521db11e52e)
5)退院後のお世話(ここがいちばん大事)
PUの術後は、「しっかり治す」ために家庭でのケアがとても重要です。
特に最初の2〜3週間は、傷の保護と、排尿の観察がポイントになります。
おうちで必ずやってほしいこと
・エリザベスカラー:なめる・かむを防ぐ(最重要)
・清潔キープ:排尿後に軽く拭く(やりすぎて擦らない)
・トイレ環境:砂が付着しにくいタイプを選ぶ/清掃をこまめに
・排尿の記録:回数、量、色(血尿の程度)、痛がり方
・処方薬の完遂:痛み止め、必要に応じた内服など
「これがあると助かる」便利グッズ
・ペット用ウェットシート(低刺激のもの)
・汚れても洗えるベッド・マット
・写真記録(出血や腫れの変化を比べられます)
6)合併症と、受診が必要なサイン
どんな手術にもリスクはあります。大切なのは「早く気づいて、早く対処する」ことです。
術後に起こりうること
・出血:少量の血尿やにじみは起こりえます(増える/止まらないは要注意)
・腫れ:術後数日は腫れやすい(急激な悪化は受診)
・感染:赤み、熱感、膿、におい、元気消失
・狭窄(尿道口が狭くなる):おしっこの勢いが弱い、出にくい
・尿路感染のリスク上昇:PU後は尿道が短くなり、細菌が入りやすくなることがあります
すぐに連絡してほしいサイン
・おしっこが出ない/トイレで踏ん張るのに出ない
・血が増える、鮮血が止まらない、ぐったりする
・嘔吐が続く、食べない、強い痛がり
・傷を気にして激しくなめる(カラーが外れていた等)
7)長期的に再発を減らすコツ(手術後もここが勝負)
PUで「閉塞」は起こしにくくなりますが、膀胱炎体質や結晶体質は残ることがあります。
だからこそ、術後は“詰まりにくい体づくり”をセットで行います。
再発予防の柱
・水分:ウェットフード活用、給水ポイントを増やす、好みの器を探す
・食事:結晶タイプに合わせた療法食(獣医師と相談)
・環境:トイレは数を増やす、静かな場所に置く、ストレスを減らす
・定期チェック:尿検査(必要なら培養)、エコーで砂や膀胱壁の状態を確認
「うちの子に合う方法」を一緒に探します
猫ちゃんは好みがはっきりしています。
「水を増やしたいけど飲まない」「療法食を食べない」など、よくある壁も、組み合わせで突破できることが多いです。
無理なく続く形に調整していきましょう。
8)よくある質問(Q&A)
Q. PUをしたら、もう詰まらない?
A. 「閉塞」はかなり起こしにくくなりますが、膀胱炎や結晶がゼロになるわけではありません。
だから術後も水分・食事・環境ケアが大切です。
Q. 手術後、尿路感染が増えるって本当?
A. 尿道が短くなることで細菌が入りやすくなることがあります。
ただし「感染するかどうか」は体質や管理で変わります。
症状がある時に適切な検査(尿検査・必要なら培養)をして、必要な治療だけを行う方針が安全です。
Q. 術後、トイレの砂はどうしたらいい?
A. 傷に砂が付くと刺激になります。術後しばらくは、砂が付きにくいタイプや清潔維持しやすいものを使い、
排尿後は軽く拭くなど、刺激を最小限にしましょう(擦りすぎは逆効果です)。
Q. いつ抜糸?いつから普通の生活?
A. 傷の状態や猫ちゃんの体質で変わりますが、目安は2週間前後でチェック・抜糸(または吸収糸なら確認)を行い、
その後に生活を段階的に戻します。大事なのは「なめない」「感染させない」「排尿の変化に気づく」です。
写真を入れる場合(差し替え用)
下の枠に、院内で撮影したエコー画像・レントゲン画像・入院中の様子などを入れると、理解が深まります。
ここに画像を貼る(WordPressで画像を挿入)
例)膀胱内の砂状所見/導尿時のエコー確認/術後の創部(刺激の少ない写真に配慮)
まとめ
会陰尿道瘻(PU)は、「詰まり」を繰り返す猫ちゃんの命を守るための大切な選択肢です。
そして、手術が成功するかどうかは、術後のケアと長期的な再発予防(飲水・食事・環境)がセットで決まります。「また詰まったらどうしよう…」という不安が大きいほど、先に手を打つ価値があります。
その子の体質とご家庭の状況に合わせて、最適なプランを一緒に組み立てましょう。
受診の目安
・トイレに何度も行くのに出ない/少量しか出ない
・血尿が増える、嘔吐、ぐったり
・術後に排尿がしづらそう/傷が赤い・腫れている・におう気になる時は、早めにご相談ください。