診察時間
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手術時間12:00-15:00
水曜・日曜午後休診
耳の慢性的な化膿(膿が出続ける状態)は、一度手術をしたからといって完全に終わりになるとは限りません。
今回ご紹介する症例は、ご家族に保護された当初に「耳の腫瘍」が見つかり、その治療のために垂直耳道と耳介(耳たぶの部分)を切除する手術を乗り越えてきた猫ちゃんです。しかしその後も、耳道とつながる皮膚表面からの排膿が長く続いていました。
局所の状態だけを見れば、「もう一度しっかり外科的に悪い部分を取りきりたい」と思う状態です。しかし、この子はFIV(猫エイズウイルス)陽性のキャリア。感染の広がりやすさ、傷の治りにくさ、そして全身に菌が回ってしまう「敗血症」のリスクを無視することはできません。
だからこそ私たちは、理想的な「外科手術」を追い求めるのではなく、「在宅での継続的なデブリード(壊死組織や膿の除去)管理」という、より現実的で安全な選択をとりました。
全身状態に急激な悪化はないものの、腎臓の数値が徐々に上がってきています。耳の感染が悪化して痛みや不快感が出ると、食欲が落ちて脱水につながり、結果的に腎臓にも大きな負担がかかります。そのため、「耳の局所管理」と「腎臓の管理」は切り離さずに同時に行うことが、この子の命をつなぐ直結ポイントになります。
現在、膿が出ている主な原因は、耳の深い部分ではなく「手術後に残った耳道入口周囲の皮膚表面」です。ここに病的なお肉(不良肉芽)が増殖し、かさぶたや壊死した組織の下で感染がくすぶり続けています。
さらに鼓膜に通じる穴も開いているため、見えている部分だけでなく、奥との繋がりを意識した非常に慎重なケアが求められます。
単純な皮膚の化膿でもなく、かといってご自宅で奥深くまで洗浄していいわけでもありません。「液や汚れを奥に入れないことを絶対条件に守りながら、表面の感染源をしっかり落とす」という難しいコントロールが必要になります。
傷口だけを見れば、全身麻酔をかけて悪い部分を大きく削り取る「再手術」をしたくなります。しかし、FIV陽性のこの子にとって、身体に大きなダメージを与える手術は、かえって全身状態を一気に崩してしまう引き金になりかねません。
過去の抗菌薬の効き方を見ても、「大きく削ればそれで終わり」という単純なタイプではないと判断しました。だからこそ、「理想的な外科治療の徹底」よりも「患者さんの安全性と今の生活を守ること」を最優先し、維持管理の道を選びました。
「膿が溜まる → 病的な肉芽が増える → さらに膿が溜まる」という悪循環を断ち切るために、病院での処置に加えて、ご家族に自宅で少しずつ感染の巣を崩していただく(デブリードしていただく)方針をとっています。
これは決して「お家でできる簡単なケア」ではありません。愛する我が子に痛い処置をするのは、ご家族にとって本当に辛く、負担の大きいケアです。
完治を狙うのではなく、「感染を暴れさせないための維持治療」。この子に寄り添うご家族の“優しさ”と、処置をやり切る“強さ”のバランスがあって初めて成り立つ治療法です。
抗生剤の注射(コンベニアなど)は使っていますが、お薬だけで解決する段階ではありません。表面の感染源をこすり落とす「デブリード」と、必要に応じて「どんな菌がいるか調べる検査(培養検査)」をセットで行う必要があります。
また、ゆっくりと進行している腎臓病に対して行っている「皮下点滴」は、単なる腎臓の治療にとどまりません。脱水を防ぎ、食欲を保ち、感染と戦うための体力を維持するための大切な治療です。耳のケアと点滴は、この子を支えるための車の両輪と言えます。
「手術をしたのに治らない」「また膿が出てきてしまった」
そんな事実だけを見ると、どうしても無力感を感じてしまうかもしれません。しかし、これは決して治療が失敗しているわけではありません。体力や免疫力、感染の質を見極め、「無理に攻めすぎずに、今ある命を優しく支える」という高度な判断が必要になる場面があるのです。
再手術をしないことは、諦めではありません。この子にとって何が一番危険で、どうすれば一番穏やかな時間を長く過ごせるかを考え抜いた結果の選択です。そして何より、その治療の中心には、毎日欠かさずケアを続けてくださるご家族の深い深い愛情があります。
派手な治療ではありませんが、こうした症例ほど、日々の地道な管理とご家族の絆が一番の力になると信じています。
This is a feline case with chronic purulent discharge from the skin surface connected to the ear canal. The patient had previously undergone resection of the vertical ear canal and auricle due to an ear tumor found at the time of rescue. As an FIV-positive cat, the patient faces a significantly higher risk of poor wound healing, spread of infection, and sepsis if subjected to further invasive procedures.
Although aggressive surgical debridement might seem ideal for the local lesion, the systemic risks were deemed too high. Therefore, we opted for a maintenance-focused strategy: in-clinic treatment combined with carefully guided home debridement by the family.
The core of the home care involves managing the surface wound rather than deep ear flushing. The family uses a topical anesthetic spray (lidocaine) for pain control, thoroughly removes crusts and necrotic debris, and strictly avoids pushing fluids or tools deeper into the ear. With the concurrent progression of chronic kidney disease, subcutaneous fluid therapy is also vital to support the cat’s overall strength and hydration to fight the infection.
Choosing not to re-operate is not a sign of giving up; it is a patient-centered decision aimed at minimizing harm and preserving the best possible quality of life.
这是一例患有慢性耳道表面排脓的猫咪病例。该猫在被救助时发现了耳部肿瘤,因此曾接受过垂直耳道和耳廓切除手术。由于它是FIV(猫艾滋)阳性,如果再次进行侵袭性手术,其伤口愈合不良、感染扩散及败血症的风险会显著增加。
虽然从局部病灶来看,彻底的外科清创可能是理想的选择,但考虑到全身风险过高,我们选择了一种以维持为主的策略:诊所治疗结合家属在家的精心清创护理。
家庭护理的核心在于表面创口管理,而非深部洗耳。家属在护理前会使用局部麻醉喷雾减轻疼痛,随后彻底清除表面的痂皮和坏死组织,并严格避免将液体或器械推入耳道深处。由于猫咪同时伴有慢性肾脏病的缓慢进展,皮下补液也成为维持其体力对抗感染的关键。
不选择再次手术并不代表放弃,而是基于对患儿生命质量和整体安全考量后做出的保护性决定。