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外用ステロイド薬皮膚症 ステロイドぬり薬による皮膚トラブル

ワンちゃんの「ステロイドぬり薬」による皮膚トラブルについて

ワンちゃんのかゆみや赤みを抑えるために処方される「ステロイドのぬり薬」は、とても効果的なお薬です。しかし、使い方を誤ったり、長期間にわたって使いすぎたりすると、かえって皮膚にトラブルを起こしてしまうことがあります。これを「外用ステロイド薬皮膚症(がいようステロイドやくひふしょう)」と呼びます。

これは、獣医師の治療が意図せず原因となって起こる「医原性(いげんせい)」と呼ばれるものの一つです。そのため、診断には「いつから、どんなぬり薬を、どのくらいの期間、どのくらいの頻度で使っていたか」という飼い主さんからの情報が非常に重要になります。

どんな症状が出ますか?

ステロイドをぬっていた場所に、次のような特徴的な症状が見られます。

  • 毛が抜ける(脱毛)
  • 皮膚がうすっぺらく弱くなる(菲薄化:ひはくか)
  • 皮膚が赤くなる(紅斑:こうはん)
  • フケのようなカサカサしたものが出る(鱗屑:りんせつ)
  • にきびのような白いポツポツができる(閉鎖性面皰:へいさせいめんぽう)

かゆみ自体は少ないことが多いです。特に、お腹や内股など、もともと毛が少なくて皮膚が薄い場所は、お薬の影響を受けやすい傾向があります。

どうやって治療しますか?

治療の基本はとてもシンプルです。

1.原因となっているステロイドのぬり薬を中止する
これが最も重要で、最優先されることです。多くの場合、お薬をやめるだけで皮膚は自然に回復に向かいます。

2.皮膚の回復をサポートする
回復を早めたり、より良い状態を目指すために、以下のようなケアを追加することがあります。

  • 保湿剤を使う: 皮膚が本来持っているバリア機能を助け、乾燥を防ぎ、回復を促します。
  • 皮膚の修復を助けるお薬を使う: 皮膚の萎縮(いしゅく:細胞がやせてしまうこと)がひどく、なかなか治らない場合に、血のめぐりを良くして皮膚組織の回復を助ける「ブクラデシンナトリウム」という成分の軟膏を使うことがあります。
  • ばい菌の感染を抑える: 弱った皮膚にばい菌が感染してしまった場合(膿皮症:のうひしょう)は、消毒薬を使って清潔にします。

【処方されるお薬の具体例】

実際に動物病院で処方される可能性のあるお薬の例です。専門的な内容ですが、知っておくことで治療への理解が深まります。

① 皮膚の回復を早めるための保湿・スキンケア剤

  • 目的: 皮膚のバリア機能を整え、潤いを与えます。
  • お薬の例: セラミド配合保湿剤(商品名: ダームワンなど)、必須脂肪酸含有オイル(商品名: デルモセント エッセンシャル6スポットオンなど)、フィトスフィンゴシン配合製品(商品名: デュクソピペットなど)。
  • 使い方: 1日に1回ぬるものから、週に1回垂らすものまで、製品によって様々です。

② 皮膚の萎縮がひどい場合に使うぬり薬

  • 目的: 血流を促進し、弱った皮膚組織の修復を助けます。
  • お薬の例: ブクラデシンナトリウム(商品名: アクトシン軟膏など)。
  • 使い方: 1日2回、患部にぬります。

③ ばい菌の感染(膿皮症)が起きた場合に使う消毒薬

  • 目的: 皮膚で増えてしまったばい菌を殺菌します。
  • お薬の例: クロルヘキシジングルコン酸塩(商品名: ヒビテン液など)。
  • 使い方: 0.5%から1%の濃度に薄めて、1日2回使用します。

治るまでどのくらいかかりますか?(予後)

ほとんどの場合、原因のステロイドぬり薬をやめることで良くなりますので、見通しは良好です。

ただし、皮膚がひどく薄くなってしまっている場合は、回復に時間がかかることがあります。また、残念ながら、一部に毛が生えてこない場所が残ったり、皮膚の薄さが完全には元に戻らなかったりすることもあります。

【重要】ステロイドぬり薬との上手な付き合い方

ステロイドは決して悪い薬ではなく、正しく使えば非常に有効です。飼い主さんに知っておいてほしい大切なポイントです。

  • 自己判断で使わない: ステロイドぬり薬は、獣医師が皮膚の状態をしっかり検査し、「アレルギー」や「免疫の病気」など、ばい菌が原因ではない炎症と診断した場合に使われるお薬です。以前もらった薬が残っていても、自己判断でぬるのはやめましょう。
  • 指示された期間と回数を守る: 「1日1回、1週間だけ」など、必ず指示された使い方を守ってください。良くなったように見えても、自己判断でだらだらと使い続けるのが一番危険です。必ず再診察を受け、獣医師と相談しながら、薬の量を減らしたり、やめたりするタイミングを決めることが大切です。
  • ステロイド以外の選択肢を知っておく: ステロイドを減らすとすぐに症状がぶり返してしまうような、コントロールが難しいアレルギー性皮膚炎などに対しては、ステロイドではないぬり薬も選択肢になります。
    • タクロリムス水和物(商品名: プロトピック軟膏0.1%):免疫の働きを調整して炎症を抑えるお薬です。使い始めに熱感や刺激を感じることがあります。1日2回ぬります。

【最新情報】2020年以降の新しい考え方とお薬

さらに新しい選択肢も出てきています。

1.ステロイドではない、新しいタイプのぬり薬の登場

アレルギー性皮膚炎に対して、デルゴシチニブ(商品名: コレクチム軟膏)という新しいぬり薬が犬で使えるようになりました。これは「JAK(ジャック)阻害薬」と呼ばれるタイプで、かゆみや炎症を引き起こす細胞内の”指令”をブロックするという働き方をします。大きなメリットは、ステロイドと違って皮膚が薄くなるなどの副作用の心配が少ない点です。これにより、長期間にわたるかゆみの管理が必要なワンちゃんにとって、安全性の高い新たな治療の選択肢が増えました。

2.「スキンケア」の考え方の進化

ただ保湿するだけでなく、「皮膚のバリア機能」と「マイクロバイオーム(皮膚常在菌のバランス)」を整えることの重要性が、より注目されています。私たちの皮膚の上には、体を守ってくれる「良い菌」と、トラブルの原因になる「悪い菌」などがバランスを保って存在しています。このバランスを整える成分を含んだシャンプーや保湿剤も開発されており、皮膚を根本から健康な状態に導くためのケアが進歩しています。

ご説明は以上です。ワンちゃんの皮膚の状態は様々ですので、治療方針については必ずかかりつけの獣医師とよく相談してください。