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ワンちゃんのかゆみや赤みを抑えるために処方される「ステロイドのぬり薬」は、とても効果的なお薬です。しかし、使い方を誤ったり、長期間にわたって使いすぎたりすると、かえって皮膚にトラブルを起こしてしまうことがあります。これを「外用ステロイド薬皮膚症(がいようステロイドやくひふしょう)」と呼びます。
これは、獣医師の治療が意図せず原因となって起こる「医原性(いげんせい)」と呼ばれるものの一つです。そのため、診断には「いつから、どんなぬり薬を、どのくらいの期間、どのくらいの頻度で使っていたか」という飼い主さんからの情報が非常に重要になります。
ステロイドをぬっていた場所に、次のような特徴的な症状が見られます。
かゆみ自体は少ないことが多いです。特に、お腹や内股など、もともと毛が少なくて皮膚が薄い場所は、お薬の影響を受けやすい傾向があります。
治療の基本はとてもシンプルです。
1.原因となっているステロイドのぬり薬を中止する
これが最も重要で、最優先されることです。多くの場合、お薬をやめるだけで皮膚は自然に回復に向かいます。
2.皮膚の回復をサポートする
回復を早めたり、より良い状態を目指すために、以下のようなケアを追加することがあります。
実際に動物病院で処方される可能性のあるお薬の例です。専門的な内容ですが、知っておくことで治療への理解が深まります。
① 皮膚の回復を早めるための保湿・スキンケア剤
② 皮膚の萎縮がひどい場合に使うぬり薬
③ ばい菌の感染(膿皮症)が起きた場合に使う消毒薬
ほとんどの場合、原因のステロイドぬり薬をやめることで良くなりますので、見通しは良好です。
ただし、皮膚がひどく薄くなってしまっている場合は、回復に時間がかかることがあります。また、残念ながら、一部に毛が生えてこない場所が残ったり、皮膚の薄さが完全には元に戻らなかったりすることもあります。
ステロイドは決して悪い薬ではなく、正しく使えば非常に有効です。飼い主さんに知っておいてほしい大切なポイントです。
さらに新しい選択肢も出てきています。
1.ステロイドではない、新しいタイプのぬり薬の登場
アレルギー性皮膚炎に対して、デルゴシチニブ(商品名: コレクチム軟膏)という新しいぬり薬が犬で使えるようになりました。これは「JAK(ジャック)阻害薬」と呼ばれるタイプで、かゆみや炎症を引き起こす細胞内の”指令”をブロックするという働き方をします。大きなメリットは、ステロイドと違って皮膚が薄くなるなどの副作用の心配が少ない点です。これにより、長期間にわたるかゆみの管理が必要なワンちゃんにとって、安全性の高い新たな治療の選択肢が増えました。
2.「スキンケア」の考え方の進化
ただ保湿するだけでなく、「皮膚のバリア機能」と「マイクロバイオーム(皮膚常在菌のバランス)」を整えることの重要性が、より注目されています。私たちの皮膚の上には、体を守ってくれる「良い菌」と、トラブルの原因になる「悪い菌」などがバランスを保って存在しています。このバランスを整える成分を含んだシャンプーや保湿剤も開発されており、皮膚を根本から健康な状態に導くためのケアが進歩しています。
ご説明は以上です。ワンちゃんの皮膚の状態は様々ですので、治療方針については必ずかかりつけの獣医師とよく相談してください。