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大腿部、鼠径部の大きな腫瘍を摘出した後の傷の閉鎖法✂️皮弁の選択肢

愛犬の腫瘍治療のプロセス

愛犬が健やかに生活できるよう、腫瘍の治療は慎重に進めなければなりません。腫瘍の場所や大きさ、そして起源に応じて、手術計画を慎重に立てています。

内腿に大きな腫瘍がある場合

安全マージンを確保するために3cmの余白を取り、適切な皮膚切開部位を決定します。皮下からの腫瘍であれば、適切なマージンで縫工筋の筋膜を含む切除が計画されます。

一方、腫瘍が筋間から発生している場合

広範囲の筋肉を除去し、大腿動脈、静脈、伏在神経の切除を伴う可能性があるため、愛犬の歩行機能への影響が心配されます。

手術では

周囲の筋肉や血管を可能な限り温存し、大きな皮膚欠損には軸状皮弁の代わりに減張切開や局所回転皮弁を使用して閉鎖します。

病理検査で不完全切除や悪性腫瘍が確認された場合に、迅速に断脚への手術方針に変更できるようにするためです。

また、悪性腫瘍が腹膜に播種するリスクを減らすためにも重要です。

腹壁からの皮膚移植である軸状皮弁を使用すると腹膜への腫瘍播種のリスクがあり、再手術時には腹膜を含む拡大切除が必要になるからです。完全切除が確認されれば、追加の手術は必要ありません。

四肢に発生する軟部組織肉腫などの悪性腫瘍は、そのグレードによって再発のリスクが大きく変わります。低グレードの軟部組織肉腫の場合、不完全切除後の再発率も10〜30%とされており、飼い主様が正確な情報を持って経過を注視しながら、治療選択に参加することが大変重要です。
傷の閉鎖が困難な四肢端では必ずしも初回の手術で完全切除を目指す必要はないかもしれません。

大型犬の場合、運動機能障害が飼い主様の介護負担を増加させる可能性がある

そのため、できる限り断脚は避け、後肢の機能を保持しながらの生活をサポートしています。仮に手術で拡大切除が必要になった場合でも、愛犬が三本足での生活に適応できるよう配慮し、飼い主様の負担を最小限に抑えるよう努めています。

皮弁を用いた治療は傷口の管理を容易にしますが、飼い主様の長期的な介護や愛犬のQOLを考慮すると、必ずしも最良とは言えません。手術後は毎日の消毒や包帯交換が求められますが、愛犬の回復を助け、快適な毎日を送るために、必要なことです。困った時はいつでもサポートします。


お家での消毒と包帯交換

リードをポールに繋いで逃げないように前準備しています。
クリゲン入りのワセリンを傷口に全て塗布します。
大きな傷の閉鎖をしたときは減張切開や皮弁処置をした傷もあるのでそれも全てワセリンをつけてガーゼを当てます。
滲出液が出るので、1日1回包帯交換をしてあげてください。
太ももの傷を寄せていると足先がむくむことがあります。
圧迫包帯で、あしさきからぎゅっと巻き上げてあげましょう。足先はきつめに、膝や太ももは緩めに巻くのがポイントです。

 

 


深腸骨回旋動脈皮弁(腹側肢)

 

起始部:腸骨稜の頭腹側が深腸骨回旋動脈の起始部である。
枝分かれ:動脈は背側枝と腹側枝に分岐する。
尾側ラインの設定:尾側ラインは腸骨翼頭側端と大転子の中間点から始まる。
頭側ラインの設定:頭側端から尾側ラインと等距離で、尾側ラインと平行にラインを引く。
採取範囲:大腸部の半分(ドナー部位として開放可能な範囲内)程度の皮弁が採取可能である。

 


深腸骨回旋動脈皮弁(背側枝)

腸骨翼の頭腹側が起始部。
背側枝と腹側枝に分枝する。
尾側ラインは腸骨頭側端と大転子の中間点とする。
頭側ラインは腸骨頭側端から尾側ラインと等距離の平行線とする。


ヒダ皮弁 Skin-Fold Advancement Flap

腹側部の皮膚のヒダ状の部分に有茎状の皮弁を作成し皮弁を回転させて縫合する
fank fold flapと呼びます。
深腸骨回旋動脈の分枝を含み、伸展が容易であるため、生存性が高いです。


浅後腹壁動脈皮弁

最も形成しやすく、頑丈
皮弁の長さ:
最大で第1-2乳腺間
皮弁の幅:内側は正中線
外側は正中から乳頭までと距離
メスはSpay
回転角度が広い時は対側の乳腺を使用する。

腫瘍の切除範囲に乳腺の血管がある時も対側を使用する。

メスは血管が発達しているので、皮弁の幅を大きくとることができるが、オスはそれほど血行が発達していないので、術後の血行不良に注意する。

移植部位には乳頭が転埴される。

 


有皮弁は90°以上回転可能で、広範
囲を被覆できますが、腫瘍移植のリスクから、病理組織学的に完全切除が確認できてから実施すべきです。

手術で腫瘍を取り除いた後、もし辺縁や深部が不完全に摘出されていたら、残った腫瘍細胞が手術器具やグローブに付着し、広がる可能性があります。再建手術でも同様に、腫瘍細胞をばらまかないよう細心の注意が必要ですが、完全なリスク除去は困難です。