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巨大食道症

1.病態

巨大食道症とは、食道の動きが弱まり、食道が大きく広がってしまう病気です。先天性、後天性二次性、後天性特発性の3種類があり、先天性は生まれつき持っている場合が多く、大型犬の中ではジャーマン・シェパード・ドッグ、グレート・デーン、ラブラドール・レトリーバー、ミニチュア・シュナウザーおよびフォックス・テリアで発生しやすく、原因は求心性迷走神経の機能障害が考えられます。後天性二次性は別の病気が原因で発生し、重症筋無力症が原因のことが多いです。後天性特発性は、原因が分かっていない場合で、日本ではミニチュア・ダックスフンドで発生することが多く、原因は求心性迷走神経の異常が考えられています。

2.診断

症状としては、食べ物を飲み込んだ後に吐き出すことや、呼吸がしにくいことがあります。この病気を診断するためには、レントゲン検査やバリウム検査を行います。また、巨大食道症が起こる原因を調べるため、血液検査や尿検査、超音波検査、内視鏡検査などを行います。もし原因がわからなかった場合は、後天性特発性巨大食道症と診断されます。また、誤嚥性肺炎という肺の病気が併発していることもあるため、胸部X線検査も行います。最近では、食道アカラシア様疾患という別の病気も報告されているので、そちらにも注意が必要です。

3.検査

巨大食道症の原因を探るために、身体全体を検査する必要があります。血液検査、尿検査、超音波検査、ACTH刺激試験、抗アセチルコリン受容体抗体価、CPK、甲状腺ホルモンなどを測定し、内視鏡検査で食道狭窄や食道炎を診断または除外することもあります。海外では、食道から胃への流入障害が起こる食道アカラシア様疾患が増加しているため、日本でも注意が必要です。
巨大食道症以外にも神経徴候がある場合は、頭部MRI検査なども検討されます。基礎疾患がない場合は、後天性特発性巨大食道症と診断されます。また、胸部X線検査では、誤嚥性肺炎の有無にも注意する必要があります。

4.治療方針

後天性二次性巨大食道症の場合、基礎疾患を治療することが必要です。しかし、治療が難しい場合や治療しても改善しない場合、先天性巨大食道症や後天性特発性巨大食道症では特別な治療ができません。そのため、食事と誤嚥性肺炎の治療が主な対処方法となります。犬の食道は平滑筋ではなく横紋筋でできているため、一部の薬剤は効果がないことがあります。基礎疾患の治療が困難であったり、改善しない場合は、栄養治療と誤嚥性肺炎に対する治療が行われます。犬の食道の筋肉が平滑筋ではないため、一般的に使用される平滑筋運動改善薬は効果がありません。ただし、シルデナフィルは食道の筋肉を弛緩させるため、先天性巨大食道症の犬には効果があるかもしれません。食事を与える際は、食事中や食事後に15〜30分ほど犬を立たせることで胃に食べ物が行き渡るようにします。また、胃瘻チューブを使って栄養管理をすることもあります。誤嚥性肺炎がある場合には、抗菌薬を投与することもあります。
この疾患は、ご自宅での栄養治療が重要となります。わんちゃんを後ろの足のみで立たせた状態でご飯を給与し、食事後も15~30分ほど立たせたままでいる必要があります。後天性特発性巨大食道症は治らない可能性が高く、生涯にわたり、食事中および食事後の立位保持が必要な疾患です。

5.予後

この病気になると、誤って食べ物や水を吸い込んでしまい、肺が炎症を起こす誤嚥性肺炎や急に悪くなったり、突然死することがあります。そのため、十分に注意が必要です。ただし、生まれつき巨大食道症の犬の一部は成長とともに回復することがあります。また、後から病気になる場合は、元々の病気を治療することで食道の動きが回復することがあります。筋肉が弱くなる病気の重症筋無力症が治療できれば、巨大食道症も治ることがあります。しかし、原因が分からず病気が重い場合は、回復することが少なく、治療が必要です。また、約40%の巨大食道症の犬は誤嚥性肺炎を起こすことがあり、この病気を併発する犬は予後が悪く、注意が必要です。