指(趾)1本だけを切除する手術(断指術)|飼い主さん向け説明[統合版]
これはどんな手術?
- 指(前足)や趾(後ろ足)を1本だけ切除して、強い痛みや感染、壊死、腫瘍、治らない傷を取り除きます。
- 前足の第3・4指は体重を多く支えるため、ここを切除すると一時的に歩き方が変わることがあります。
- 第1指(狼爪)は非負重のため、日常生活への影響は比較的軽めです。
[追記]手術の安全ポイント
- 皮膚切開は縫合時の張力を最小化するデザイン。
- 駆血帯は低圧・短時間(20〜30分)で使用、時間管理を徹底。
- 断端の指動静脈は深部で確実に結紮。関節面は掻爬・整形して体液貯留を予防。
- 必要に応じドレーンを短期留置。
手術が必要になりやすいケース
- 重度外傷(挫滅・脱臼・開放骨折)、壊死/凍傷・熱傷
- つめや指の腫瘍(扁平上皮癌・メラノーマ・基底細胞腫など)
- 骨髄炎・難治性化膿、潰瘍/壊疽、強い慢性痛
- [追記]猫の多指病変:複数の指に腫れ・出血・痛みがあるときは肺‐指症候群(肺腫瘍の指転移)を疑い、胸部検査を優先。
手術までに行う検査
- X線(骨破壊・関節浸潤の確認)、必要により超音波/CT
- 腫瘍が疑われる場合:細胞診/生検、胸部X線、リンパ節評価
- 感染が強い場合:細菌培養+感受性試験
- 多指病変・猫では胸部画像先行を推奨
手術の流れ(やさしい説明)
- 全身麻酔下で、指を関節で外すか骨の一部ごと切除します。
- 指の血管を結紮して止血、神経端を整える処理を行います。
- 皮膚を丁寧に縫合し、厚めの包帯で保護します。
- 切除組織は病理検査に提出し、診断と取り切れているか(マージン)を確認します。
[追記]減張に配慮した縫合/関節面の掻爬/必要に応じた短期ドレーン/駆血帯は短時間のみ。
入院・通院とおうちケア
- 多くは日帰り〜1泊。包帯は2〜3日に1回交換、10〜14日で抜糸が目安。
- 散歩は短時間から。包帯は濡らさない(雨の日はビニール→帰宅後は外す)。
- エリザベスカラーでなめさせない。
- すぐ受診:出血・悪臭/足先の強い腫れ・冷たさ/痛み増悪/元気・食欲低下。
予後の目安
- 多くは数週間で普段の生活に戻ります。
- 負重指や複数本の切除では、歩き方の調整に時間が必要なことがあります。
- 腫瘍例では、病理によって再切除(より近位)や抗がん治療を相談します。
- 症例ではトイプードル9歳・第2指良性腫瘍で断指後1週間で跛行消失。一方、猫の多指病変は悪性が多く胸部検査が重要です。
保存療法(内科)/痛み・感染コントロール
※以下は一例です。腎・肝機能や併用薬で必ず調整。猫はNSAIDsの適応・期間に特に注意。
鎮痛・消炎(犬)
- カルプロフェン 2.2 mg/kg q12h または 4.4 mg/kg q24h(PO)
- メロキシカム 0.1 mg/kg 初回、以後 0.05 mg/kg q24h(PO)
- ロベナコキシブ 1–2 mg/kg q24h(PO)
- ガバペンチン 5–10 mg/kg q8–12h(PO:神経痛併用)
- 必要時オピオイド:ブトルファノール 0.2–0.4 mg/kg、メタドン 0.1–0.3 mg/kg(IM/IV)
鎮痛・消炎(猫)
- ロベナコキシブ 1 mg/kg q24h(PO/SC)最長3日を目安
- メロキシカム 0.05 mg/kg q24–48h(PO:腎疾患併存は慎重に)
- ガバペンチン 5–10 mg/kg q8–12h(PO)
- 必要時:ブプレノルフィンなど
抗菌薬(創汚染・骨髄炎が疑われるとき)
- アモキシシリン‐クラブラン酸 12.5–25 mg/kg q12h(PO)
- セファレキシン 20–30 mg/kg q12h(PO)
- クリンダマイシン 5.5–11 mg/kg q12h(PO)
- 骨髄炎では6–8週以上を目安(培養結果で調整)
獣医師向けクイックメモ(解剖・術式・合併症・アップデート)
解剖・負重
P1–P3、MCP/MTP・PIP・DIP、側副靱帯、背側伸筋腱(総/外側)、浅/深指屈筋、掌/足底固有指A/V、橈/正/尺(後肢は脛/腓/伏在)。前肢第3・4指=主負重、第1指=非負重。
適応・ステージング
- 非可逆損傷(粉砕骨折・壊死・高度感染・化学/熱/凍傷)
- 腫瘍(爪床・指骨・軟部)/難治性疼痛・潰瘍/奇形・慢性脱臼
- 猫・多指病変は肺‐指症候群を除外(胸部画像+LN評価)
術前計画
- 画像:X線±CTで関節/骨浸潤評価、腫瘍は病理計画とステージング
- 麻酔:末梢ブロック(橈/正/尺 or 上腕叢)+全身麻酔
- 駆血帯:低圧・短時間(20–30分)・時限解除
- 抗菌薬:清潔手術は原則不要
- 所属/センチネルLN評価を症例により検討
第一指(狼爪)断指
- 基部で楕円皮膚切開
- 伸筋腱・屈筋腱・指A/V処理、MCP離断or近位切除
- 皮下3-0吸収糸、皮膚3-0〜4-0非吸収モノ
- 厚手軟性包帯
第2〜5指 断指
- 切開:背側縦+環状
- 側副切離→関節離断、必要によりP3切除
- 指A/V深部二重結紮、神経端牽引切断→筋内埋没
- 滑膜掻爬+死腔対策、欠損大はパッド移動/皮弁
- 閉鎖:皮下3-0吸収、皮膚3-0〜4-0非吸収
- ドレーン短期留置(必要時)
術後管理
- 包帯:厚手軟性10–14日、2–3日毎交換(過圧・湿潤・滑落注意)
- 疼痛:犬 NSAID±オピオイド±Gabapentin 5–10 mg/kg q8–12h 10–15日/猫 ロベナコキシブ短期±ブプレノルフィン±Gabapentin
- 抗菌薬:清潔手術は原則不要。汚染/感染は培養に基づき6–8週
- 抜糸:10–14日、48–72hで早期再診
合併症と対応
- 出血(術中結紮/術後圧迫)、感染/創離開(包帯是正+培養下ABX)
- 皮膚壊死(張力軽減・再縫合±皮弁)、神経腫/幻肢痛(端処理+Gabapentin)
- 包帯障害(冷感・蒼白・強腫脹→即巻き直し)
- 断端陽性:より近位の再切除(Ray〜中手/中足)や補助療法
- 猫肺‐指症候群は全身評価が鍵