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断脚(前肢)

断脚の目的と術後の歩行

断脚と聞くと残酷なイメージを抱く方もいるかもしれませんが、骨の腫瘍に伴う激しい痛みから解放するために選択されるケースが多いです。術後は3本足でも歩ける子が多く、生活の質(QOL)を維持できる可能性があります。



■ 骨を起源とする腫瘍の場合

  • 骨肉腫、組織球肉腫などが代表的。腫瘍が骨を破壊し、耐えがたい疼痛を引き起こします。
  • 診断時に既に遠隔転移している場合もあり、延命よりも痛みの緩和を目的に断脚を行うことがあります。
  • 高グレードの肥満細胞腫で広範囲のマージンが必要な場合にも、根治を目指して断脚が検討されることがあります。

■ 術後の歩行

  • 犬は前肢で体重の約60%、後肢で約40%を支えています。
  • 術後、体重を分散させながら歩くようになり、早い子だと術後すぐに立って歩き出す場合もあります。
  • 3本足になっても、頭を上下に振りバランスを取りながら、意外なほど早く順応する子が多いです。

即時断脚手術について

はじめに

当院では、高齢犬に発生した前肢の腫瘍に対し、麻酔リスクや転移リスクの観点から、
即時断脚手術という方法をご提案する場合があります。腫瘍が悪性である可能性が高く、
かつ急速に増大しているケースでは、CT検査や切開生検の結果待ち
に2週間ほど要する間に転移が進行する恐れがあり、麻酔回数が増える点も懸念されます。

そこで、肺への転移が認められない場合に限り、オーナー様のご同意をいただければ、
検査を省いた上で、1回の麻酔のみで断脚手術を行う「即時断脚手術」を選択することが可能です。


治療方針の選択肢

1. 即時断脚手術(CT・病理検査を省略)

  • メリット
    • 麻酔が1回で済み、高齢犬の負担を軽減できる
    • 検査待ち期間を省き、早期に転移リスクを抑える可能性がある
    • 検査費用がかからないため、比較的経済的負担を抑えられる
  • デメリット
    • 腫瘍が良性だった場合、過剰治療となり、愛犬のQOL(生活の質)に影響が出る

2. CT検査および病理検査を行った上で手術

  • メリット
    • 確定診断を得てから、最適な治療方針を立てられる
  • デメリット
    • 検査結果を待つ間に約2週間かかり、悪性の場合は転移が進行するリスクがある
    • 麻酔回数が増え、高齢犬の負担が大きくなる可能性がある

まとめ

即時断脚手術は、悪性腫瘍の転移リスクを抑えつつ、
高齢犬の麻酔回数を減らす
ための重要な選択肢です。
一方で、腫瘍が良性の可能性もある以上、
過剰治療につながるリスクも否定できません。

愛犬のQOLを考慮しながら、オーナー様と共に最適な治療法を検討させていただきます。


肩甲骨からの前肢断脚術:基本的な流れと注意点

1.皮下脂肪と皮弁の取り扱い

前肢断脚では大きな創部ができるため、皮下脂肪や皮弁の扱いがとても重要です。

  • 皮下脂肪は可能な限り温存
    血行を保ち創治癒を促進するために、皮下組織は丁寧に扱います。
  • デッドスペースの低減
    被覆時に皮下をしっかり縫合し、血腫や感染リスクを抑えます。


2.筋肉の切離と肩甲骨の扱い

肩甲骨を体幹から切り離すには、以下の筋肉を順番に切離していきます。

    • 僧帽筋(Trapezius)、肩甲横突筋(Omotransversarius)、菱形筋(Rhomboideus)を切離し、肩甲骨を外側または背側へ牽引できるようにします。
    • 腹鋸筋(Serratus ventralis)を肩甲骨の内側面から剥離し、肩甲骨をフリーに。
    • 上腕頭筋(Brachiocephalicus)、広背筋(Latissimus dorsi)、浅胸筋(Superficial pectoral)、深胸筋(Deep pectoral)を付着部で切離していきます。

3.血管および神経の処理

  • 上腕神経叢(Brachial plexus)は体幹に近い位置で切離し、神経そのものは結紮しません。
  • 腋窩動静脈(Axillary artery & vein)は別々に2重結紮し、確実な止血を行います。大型犬の場合は特に入念な血管処理が必要です。

4.ドレーンの設置

基本的に筋肉や皮膚を丁寧に縫合し、デッドスペースを最小限にできる場合はドレーンを使わないことが多いですが、創部が大きい場合や腫瘍切除を伴う場合などにはドレーン設置を検討します。


5.被覆と術後管理

  • 筋肉断端を並置し、複数層で縫合してデッドスペースを減らします。
  • 創部への出血や腫脹を抑えるために、圧迫包帯(オルテックスなど)を施すことが一般的です。
  • 痛み止め(オピオイドやNSAIDsなど)を適切に使用し、疼痛管理を徹底します。

6.その他の確認点

  • 大型犬や貧血のある動物では、術前の輸血や血液製剤の準備も検討します。
  • 腫瘍が原因の場合はマージン(切除範囲)を十分確保するように切離ラインを調整します。
  • 術後はバランスの変化が大きいほど負担が増すので、体重管理と安静指示を徹底します。


まとめ

肩甲骨からの前肢断脚術は、腫瘍や重度の外傷などで前肢の温存が困難な場合に行われる大掛かりな外科手術です。
皮膚や筋肉の取り扱い血管・神経の確実な処理、そして術後管理が成功のカギを握ります。
症例に合わせて手術法やドレーンの使用などを柔軟に検討し、創部のトラブルを最小限に抑えましょう。
また、骨を起源とする腫瘍による強い痛みからの解放を目的とする場合、術後は3本足でも十分に歩いたり生活したりできるケースが多いため、
動物のQOLを考慮した上での大切な選択肢となります。