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犬猫が食べてはいけない食べ物ー中毒について

はじめに

犬猫が中毒を起こす可能性のある食べ物を食べたことによる症状や対応についてまとめています。

チョコレート中毒

中毒の原因: チョコレートに含まれるテオブロミン、カフェイン、テオフィリンなどの物質が中毒の原因です。犬が中毒のリスクが高く、猫ではまれです。

危険度: チョコレート中毒は危険度はひくいですが、まれに死亡することがあります。

症状: 中毒症状は摂取後1〜6時間で現れ、初期に不安、多飲、嘔吐、下痢があります。重度の中毒では興奮状態、多尿、けいれん発作、不整脈、高血圧、高体温などが起こります。

対応:催吐処置や胃洗浄処置、活性炭の投与などが行われます。けいれん発作がある場合は適切な薬物が使用されます。

ネギ中毒

中毒を起こす動物: ネギ類中毒は犬と猫の両方に影響を与えますが、猫の方が感受性が高いと言われています。

危険度: ネギ類中毒は危険度が高く、死亡することもあります。

原因: ネギ類に含まれる有機化合物が消化管で吸収され、体内で酸化物質に変化し、溶血や毒性を引き起こします。これにより赤血球が破壊され、貧血が起こります。

症状: 中毒の症状には貧血、活動性の低下、ヘモグロビン尿、黄疸、頻呼吸、頻脈、運動不耐性、血液性の嘔吐や下痢、腹部痛などが含まれます。
危険な摂取量: 犬では15〜30g/kg、猫では5g/kgのネギを摂取すると中毒症状が現れる可能性があります。

対応: ネギ摂取後1〜2時間以内であれば、催吐処置を行い、活性炭の投与も検討します。症状が進行している場合、輸液や酸索吸入、輸血などの治療が必要です。

キシリトール中毒

中毒を起こす動物: キシリトール中毒は犬に影響を与えます。他の動物では中毒の報告はありません。

危険度: キシリトール中毒は危険度が高く、死亡することもある緊急性のある症状です。

原因: キシリトールを摂取すると急激にインスリンが放出され、低血糖症状が現れます。また、高量摂取時には肝不全や血液凝固障害も起こる可能性があります。

症状: 中毒の症状は摂取後30〜60分で嘔吐、優眠、運動失調などの低血糖症状が始まり、さらに進行すると虚脱や発作が生じることがあります。
危険な摂取量: キシリトール含有量は製品により異なりますが、キシリトール0.1g/kg以上の摂取で低血糖の症状が現れ、キシリトール0.5g/kg以上の急性肝障害が起こる可能性があります。

対応: 低血糖が明らかな場合、静脈内に20%グルコース液を投与し、持続的な点滴を行います。低カリウム血症や低リン血症があれば補正を行い、肝性脳症に対する対応も行います。血液凝固異常がある場合は、新鮮凍結血または全血輸血を検討します。

ブドウ、レーズン中毒

原因: 犬がブドウやレーズンを摂取すると急性腎不全のリスクがあるが、詳しい原因は不明。関連する物質としてオクラトキシン、フラボノイド、タンニン、ポリフェノール、モノサッカライドが考えられています。

症状: 摂取後24時間以内に嘔吐、食欲不振、傾眠、下痢などの症状が現れ、48時間以降に急性腎不全が発症する可能性があります。

危険な摂取量: 生のブドウ中毒量は19.6〜148g/kg以上、レーズン中毒量は2.8〜36.4g/kg以上とされているが、個体差や犬の種類による影響があります。

対応: 摂取後時間が経過していない場合、催吐、胃洗浄、活性炭の投与が行われる。摂取後48〜72時間は輸液と血液検査が行われ、腎不全の監視が重要です。

ユリ中毒

原因: ユリは猫にとって極めて危険な植物で、微量でも急性腎不全を引き起こすことがあります。これは致命的で、生き残っても慢性腎不全に進行する可能性があります。中毒のメカニズムには2つの段階が関与しており、直接的な尿細管上皮障害と脱水による腎障害が含まれます。

危険な摂取量: 特にテッポウユリ、オニュリ、アジアンティックリリー、ヤマユリなどのユリは、わずかな量の摂取でも中毒が起こる可能性があります。たとえば、葉1枚でも中毒が発症することがあります。

症状: ユリ中毒の症状は摂取後12時間以内に現れ、嘔吐、食欲不振、沈んだ様子、多飲多尿が主な症状です。症状は一時的に改善することがあるが、摂取後24〜96時間で急性腎不全が発症します。血液検査と尿検査で異常が見られます。

対応: ユリを摂取した場合、2時間以内で症状が現れない場合、催吐処置と活性炭の投与が行われることがあります。摂取からの時間が短い場合、内視鏡を使用して胃内のユリを摘出することも考えられます。脱水を防ぐため、無尿状態でない限り、輸液療法が重要です。無尿状態の場合、通常の利尿薬はあまり効果がないことが多いです。

毒物摂取の診断において問診と身体検査は極めて重要です。問診では、毒物の種類、摂取までの時間、量、臨床症状の有無、症状の順序やタイミングなど、詳細な情報を収集します。また、身体検査では患者の意識レベルやバイタルサインを評価し、臨床徴候があれば適切な治療を優先します。必要に応じて心電図、血液検査、神経学的検査なども行います。

来院時にけいれん発作、嘔吐による脱水、意識低下、虚脱などがある場合、抗けいれん処置、静脈点滴、酸素吸入などを優先的に行います。口臭や吐物のにおいも、毒物の特定に役立つ情報として確認されるべきです。

中毒物質の浄化

催吐処置

毒物を摂取した場合は、消化管浄化が必要です。催吐処置は摂取から短時間内に有効ですが、時間が経過すると効果が減少します。催吐処置は2時間以内に行い、胃内に毒物が残っている可能性がある場合に適しています。

催吐処置に使用される薬剤には、さまざまな選択肢があります。以下に一部の薬剤とその特性を示します:

3%過酸化水素水(オキシドール):
嘔吐を誘発する目的で使用されます。
投与量は1〜2mL/kg(経口)で、嘔吐誘発率は50〜70%と報告されています。
副作用として胃粘膜障害、食道炎(特に猫に影響)、誤って気道に入ると重度の誤嚥性肺炎の可能性があるため、注意して使用する必要があります。
α2作動薬(キシラジン、メデトミジン):
嘔吐の副作用があるため、猫には催吐剤として有用ですが、犬では使用しないことが一般的です。
循環器への影響が強いため、循環器系に障害のある動物には注意が必要です。
塩酸メデトミジンは猫の催吐剤として使用され、静脈内に投与されることがあります。
トラネキサム酸:
止血剤として主に使用されますが、悪心と嘔吐を誘発する副作用を利用して催吐剤としても使用されます。
副作用として散瞳、血圧低下、ショック、けいれん発作などが報告されています。
静脈内投与が行われることがあり、催吐誘発率は高いです。
活性炭の投与

活性炭は中毒の治療に広く使用される吸着剤で、中毒物質の吸収を減少させ、既に血中に吸収された毒物の排泄を促進します。活性炭はほぼすべての中毒症例で推奨されますが、禁忌症例や活性炭に吸着しない物質(エタノール、キシリトール、重金属など)を摂取した場合を除きます。

活性炭の吸着作用は可逆的で、投与後1分以内に始まり、離脱はゆっくりと進行します。活性炭の作用は消化管内容物の存在と消化管内のpHに影響されます。特に、牛乳やエタノールが存在すると活性炭の効果が減少し、胃から小腸に通過するとpHが上昇して離脱が起こります。通常、1〜4g/kgの活性炭が推奨されています。

強制利尿

強制利尿は中毒物質の排泄を促進するために用いられ、尿量を増加させる治療法です。この治療法は急性中毒の場合に広く使用されます。尿量が不足する場合、フロセミドやドパミンなどの利尿薬が使用されることもあります。治療中には尿量、体温、呼吸数、心拍数などがモニターされ、必要に応じて尿比重、電解質、血圧などの評価が行われます。

これらの処置は慎重に行われるべきであり、選択した薬剤の特性と副作用を理解し、症例に応じて適切な処置を行うことが重要です。

その他の治療

拮抗薬や解毒薬は、毒物の毒性を軽減する役割を果たす物質です。ただし、毒物の種類に応じて適切な拮抗薬や解毒薬が異なります。解毒薬は一部の特定の毒物に対してしか効果がありませんので、使用には慎重さが必要です。

また、脂溶性薬剤による中毒に対しては、最近では脂肪乳剤の静脈内投与が有効とされています。脂肪乳剤は血液中で脂肪滴を形成し、毒物の血中濃度を低下させる働きがあると考えられています。これは比較的新しい治療法であり、特定の脂溶性薬剤に対する効果や投与方法について、今後の研究で詳細が明らかにされることが期待されています。