診察時間
午前9:00-12:00
午後15:00-18:00
手術時間12:00-15:00
水曜・日曜午後休診
【はじめに:飼い主様へ】
非常に深刻で、命に関わる病気のため、専門的な言葉が多く出てきますが、ご家族の一員であるワンちゃん・ネコちゃんがどのような状態にあり、どのような治療を受けているのかを理解するための一助となれば幸いです。
重要:ここに記載されている情報は、あくまで一般的な知識を深めるためのものです。実際の診断や治療は、必ず担当の獣医師の判断に従ってください。動物の状態は一頭一頭まったく異なります。
簡単に言うと、「感染症が原因で、体じゅうのシステムが暴走してしまい、命が危険な状態」です。
獣医師は、飼い主さんからのお話、体の検査、そして精密検査を組み合わせて、パズルのように診断を組み立てていきます。
以下のような症状がないか、詳しくお伺いします。
SIRS(全身性炎症反応症候群)の診断基準
獣医師は、体の炎症が全身に及んでいるかを判断するために、以下のチェックリストを使います。基準を満たすと、敗血症が強く疑われます。
【犬の基準】 (4項目のうち2項目以上を満たす場合)
| 診断項目 | 基準値 |
|---|---|
| 体温(℃) | 38.1℃未満 または 39.2℃より高い |
| 心拍数(/分) | 120回より多い |
| 呼吸数(/分) | 20回より多い |
| 白血球数・杆状核好中球(%) | 6,000/µL未満 または 16,000/µLより多い、かつ未熟な好中球が3%より多い |
【猫の基準】 (4項目のうち3項目以上を満たす場合)
| 診断項目 | 基準値 |
|---|---|
| 体温(℃) | 37.8℃未満 または 40℃より高い |
| 心拍数(/分) | 140回未満 または 225回より多い |
| 呼吸数(/分) | 40回より多い |
| 白血球数 | 5,000/µL未満 または 19,000/µLより多い |
その他の検査
| 疑われる病気 | 検査で何を見るか(何が起こっているか) |
|---|---|
| 感染性腹膜炎 (お腹の中で細菌感染) |
血液中の糖分から腹水中の糖分を引いた差が20mg/dL以上ある(細菌が糖分を食べてしまうため)。 |
| 膵炎 | 腹水中のアミラーゼやリパーゼ(膵臓の酵素)が、血液中より高い。 |
| 胆汁性腹膜炎 (胆嚢が破れた) |
腹水中のビリルビン(胆汁の色素)が、血液中の2倍以上ある。 |
| 尿性性腹膜炎 (膀胱などが破れた) |
腹水中のクレアチニン(腎臓から出る老廃物)が、血液中の2倍以上ある。カリウムの比率も参考にする(犬は1.4倍以上、猫は1.9倍以上)。 |
| 腹腔内出血 (猫) | 腹水の血液濃度(PCV)が5%以上ある。 |
治療は時間との戦いです。目標は「①まず命を繋ぎ止め(循環の安定化)」、「②原因の感染症を叩く」ことです。
注意:以下は獣医師向けのガイドに記載されているリストです。実際にどのお薬をどの量で使うかは、獣医師が動物の状態をみて厳密に判断します。
《輸液製剤》
| 薬剤名 | 犬の用量 | 猫の用量 | 考察・注意点 |
|---|---|---|---|
| 晶質液 (乳酸リンゲル液など) |
10~20 mL/kg, 15分かけて点滴 | 10 mL/kg, 15分かけて点滴 | まず最初に行う基本的な点滴。状態を再評価して追加投与する。 |
| ヒドロキシエチルデンプン 70000 | 5 mL/kg, 10分以上かけて点滴 | 2.5~5 mL/kg, 10分以上かけて点滴 | 血管内に水分を保つ力が強い液体。猫では急速投与で吐き気が出ることがある。 |
| 7.5% 高張食塩液 | 3~5 mL/kg, 5分以上かけて点滴 | 3~5 mL/kg, 5分以上かけて点滴 | 急速に血圧を上げる効果があるが、一時的に心拍数が下がったり血圧が下がることがある。 |
| 濃厚赤血球、凍結新鮮血漿 | 10~20 mL/kg, 2~4時間かけて点滴 | 10~20 mL/kg, 2~4時間かけて点滴 | 貧血や血液凝固異常の時に使用。心臓病がある場合はゆっくり投与。 |
| 新鮮全血 | 20 mL/kg, 2~4時間かけて点滴 | 20 mL/kg, 2~4時間かけて点滴 | 大出血時などに使用。 |
《血管収縮薬・強心薬》
| 薬剤名 | 犬の用量 (µg/kg/分) | 猫の用量 (µg/kg/分) | 作用・注意点 |
|---|---|---|---|
| ドパミン塩酸塩 | 1~4, 5~10, 10~20 | 1~4, 5~10, 10~20 | 用量によって血管拡張、心収縮力UP、強い血管収縮と効果が変わる。 |
| ドブタミン塩酸塩 | 2~20 | 2~5 | 主に心臓の収縮力を高める。猫では発作を起こす可能性。 |
| ノルアドレナリン | 0.05 | 0.05 | 強い血管収縮作用で血圧を上げる。 |
| バソプレシン | 0.05~2 mU/kg/分 | (記載なし) | 体が酸性に傾いている時でも血管を収縮させる効果がある。 |
《鎮痛・鎮静薬》
| 薬剤名 | 犬の用量 | 猫の用量 | 考察・注意点 |
|---|---|---|---|
| ブプレノルフィン | 0.005-0.02 mg/kg, 8時間ごと | 0.005-0.02 mg/kg | 痛み止め。猫では口の粘膜からの吸収が良い。 |
| ブトルファノール | 0.1-0.4 mg/kg/時 (持続点滴) | 0.1-0.4 mg/kg/時 (持続点滴) | 鎮痛・鎮静作用。 |
| フェンタニル | 2-10 µg/kg/時 (持続点滴) | 1-4 µg/kg/時 (持続点滴) | 強力な痛み止め。 |
| モルヒネ | 0.25-1 mg/kg, 4-6時間 | 0.05-0.5 mg/kg, 4-6時間 | 強力な痛み止め。急な静脈注射は嘔吐を引き起こすためゆっくり投与。 |
| ケタミン | 0.1-0.6 mg/kg/時 (持続点滴) | 2-5 µg/kg/時 (持続点滴) | 鎮痛・鎮静。頭の怪我や高血圧、心臓病では注意が必要。 |
| ミダゾラム / ジアゼパム | 0.1-0.5 mg/kg/時 (持続点滴) | 0.1-0.5 mg/kg/時 (持続点滴) | 鎮静薬、抗けいれん薬。 |
《消化管保護薬》
| 薬剤名 | 犬の用量 | 猫の用量 | 作用 |
|---|---|---|---|
| オメプラゾール | 0.7-1 mg/kg, 1日1回 | 0.7-1 mg/kg, 1日1回 | 強力な胃酸分泌抑制薬。 |
| ファモチジン | 0.5-1 mg/kg, 1日1-2回 | 0.5-1 mg/kg, 1日1-2回 | 胃酸分泌抑制薬。 |
| マロピタント (セレニア®) | 1 mg/kg, 1日1回 | 1 mg/kg, 1日1回 | 強力な吐き気止め。 |
敗血症性ショックは、非常に厳しい病気です。
【最後に】
ご家族がこのような深刻な状態にあることは、飼い主様にとって非常につらく、ご不安なことと存じます。この情報が、獣医師からの説明をより深く理解し、病気と向き合うための少しでもお役に立てれば幸いです。分からないことや不安なことは、どんな些細なことでも担当の獣医師に質問してください。