047-700-5118
logo logo

診察時間
午前9:00-12:00
午後15:00-18:00
手術時間12:00-15:00
水曜・日曜午後休診

banner
NEWS&BLOG
猫の異物誤飲






猫の異物誤飲の治療法|獣医師が使うガイドラインと最新情報を飼い主様向けに解説

猫ちゃんが異物を飲み込んでしまったら?

大切な猫ちゃんが何かを飲み込んでしまったかもしれない時、飼い主様はとても心配になりますよね。ここでは、獣医師がどのような考え方で診断や治療を進めていくのか、その基準となっているガイドラインの内容と、最近の新しい情報を合わせて詳しくご説明します。

【重要】


この説明は、あくまで一般的な知識をご提供するものです。実際の診断や治療は、猫ちゃんそれぞれの状態によって全く異なりますので、必ずかかりつけの動物病院の先生にご相談ください。

獣医さんが見る「猫の異物誤飲」の基本

1. なぜ問題なの?猫の異物誤飲のキホン

猫は犬に比べて誤飲は少ないですが、遊んでいるうちに糸や裁縫針、釣り針などを飲み込んでしまう事故が報告されています。猫特有のものとして、毛づくろいでなめた毛が胃や腸の中で固まって「毛球」となり、異物として詰まってしまうこともあります。

胃の中に異物があると、胃の出口を塞いだり、胃の粘膜を傷つけて胃炎を起こしたりします。症状は、全く無症状な子から、しつこい嘔吐を繰り返す子まで様々です。

異物が胃を通り抜けて小腸に移動すると、そこで詰まってしまう(腸閉塞)ことがあります。こうなると、しつこい嘔吐、食欲不振、ぐったりする、お腹を痛がるなど、胃にある時よりも重い症状が出ることが多いです。

特に「ひも状異物」は、腸に引っかかってアコーディオンのように腸をたぐり寄せてしまい、最悪の場合、腸に穴を開けてしまう危険な状態です。

2. どうやって見つけるの?(診断方法)

飼い主様からの「これを飲み込んだかもしれない」というお話が、診断の何よりの手がかりになります。もし誤飲の心当たりがない場合、診断はとても難しくなります。

  • 問診: 毛球を疑う場合は、普段から過剰に毛づくろいをしていないか、毛混じりのものを吐かないか、うんちに大量の毛が混じっていないかなどを詳しくお伺いします。
  • レントゲン検査: 金属や骨など、レントゲンに写るものであれば簡単に見つかります。また、何度も吐いているのに胃の中に食べ物がたくさん残っている場合も、異物で流れが悪くなっている可能性を考えます。
  • 超音波(エコー)検査: レントゲンに写らない布やプラスチック、毛球などを見つけるのに非常に役立ちます。異物は、特徴的な影を伴って白っぽく見えます。ひも状異物も、腸が蛇のようにくねくねと曲がっている特徴的な様子から診断できます。ただし、胃の中はガスや食べ物が邪魔をして、エコーでは見つけにくいこともあります。
  • CT検査: 異物が胃にあるか腸にあるか、腸のどのあたりで詰まっているか、といった情報を正確に得ることができます。
  • 内視鏡(胃カメラ): 最終的な確認のために、胃カメラを口から入れて直接胃の中を覗いてみることもあります。

3. どうやって取り出すの?(治療方法)

方針1:吐かせる処置(催吐処置)

飲み込んだばかりで、かつ先の尖っていない安全なものであれば、お薬を使って吐かせる処置を試みることがあります。麻酔をかけずに意識がある状態で行えるのがメリットです。

使うお薬と量:

  • ① キシラジン(商品名:セラクタール®注など): 体重1kgあたり1mgを筋肉に注射します。1日1回までです。
  • ② トラネキサム酸(商品名:トランサミン®など): 体重1kgあたり50mgを静脈に注射します。1日1~2回までです。ただし、このお薬は猫では犬ほど吐かせることができず、安全性や副作用もはっきりと分かっていない点をご理解いただく必要があります。

注意点: 竹串や針など、食道を傷つける危険があるものは絶対に吐かせません。すでに何度も吐いている子はこの処置を行わないことが多いです。お薬を使っても吐かない場合もあります。

方針2:胃カメラで取る(内視鏡)

全身麻酔をかけて、口から胃カメラを入れ、マジックハンドのような器具(鉗子)で異物をつかんで取り出す方法です。お腹を切らなくて済む、体への負担が少ない方法で、手術の前にまず検討されます。

条件: 胃の中が空っぽの状態がベストです。食べ物がたくさんあると、その中に異物が紛れて見つけられない可能性があるためです。

注意点: ひも状の異物が胃から腸へ流れてしまっている場合、無理に引っ張ると腸に穴が開く危険があるため、絶対に引っ張りません。異物が胃カメラの届かない小腸の奥まで行ってしまっている場合は、この方法では取れません。

方針3:手術で取る(外科的切開術)

上記の方法で取り出せない場合や、最初から危険だと判断される場合に選択される、確実な方法です。

  • 胃切開術: 胃の中にある大きな異物や、食道などを傷つける危険のある異物などを取り出します。
  • 腸切開術: 小腸に異物が詰まっている場合に行います。腸のなるべく健康な部分を少しだけ切って、そこから異物を取り出します。
  • 腸切除・吻合術: 異物によって腸が傷んで腐ってしまっていたり、穴が開いていたりする場合は、その悪い部分の腸を切除して、健康な腸同士をつなぎ合わせます。
  • ひも状異物の場合: 無理に1か所から引き抜くと腸が裂けてしまうため、何か所か腸を切開し、ひもを分割しながら慎重に取り出します。
  • 縫合: 切開した腸は、「3-0」または「4-0」という細さの、体内で溶ける一本糸を使って、一針ずつ結ぶ方法で縫い合わせます。

4. 使う可能性のあるお薬(処方例)

胃炎が起きている場合、胃の粘膜を守ったり、胃酸を抑えたりするお薬を使います。

  • 胃粘膜保護薬: スクラルファート水和物(商品名:アルサルミン®など)を、体重1kgあたり0.5〜1g、1日2回飲ませます。
  • 胃酸分泌抑制薬: ランソプラゾール(商品名:ランソプラゾール®錠など)を、体重1kgあたり1mg、1日1回飲ませます。

5. その後はどうなるの?(予後とご家庭での注意)

  • 予後: 異物を取り除けば、通常は元気に回復します。しかし、発見が遅れたり、腸に穴が開いて「腹膜炎」を起こしたりしている場合は、命に関わることもあります。
  • 飼い主様へのお願い: 誤飲は、飼い主様の環境管理によって防げる事故です。猫ちゃんが興味を示しそうなおもちゃや小物は、必ず片づけるようにしてください。
  • 手術後の看護: 手術後は24時間ほど食事を止め、その後少しずつごはんを与え始めます。縫った部分から内容物が漏れていないかを慎重に確認しながら、食事の量を増やしていきます。(※この点については、下の最新情報で重要な変更点があります。)

ここが変わった!最新の考え方

上記のガイドラインは今も基本ですが、いくつかの点で新しい考え方が出てきています。

  • 「吐かせるお薬」の新しい考え方:
    ガイドにある「キシラジン」は、鎮静作用が強く、心臓や呼吸に負担をかけることがあります。そのため最近では、より安全性が高く、処置後に拮抗薬(作用を打ち消す薬)を使って早く覚醒させることができる「デクスメデトミジン」というお薬が選ばれることが増えています。
  • 一番大事な変化!「手術後のごはん」について:
    以前は「手術後は腸を休ませるために24時間絶食」が常識でした。しかし、現在では「合併症がなければ、なるべく早く食事を再開する(早期給餌)」という考え方が主流です。

    なぜ?
    麻酔から覚めて吐き気がなければ、術後4~12時間以内に少量の食事を与えることが推奨されています。早く栄養を摂ることで、腸の細胞が元気になり、腸の動きが活発になります。その結果、腸の治りが早くなり、入院期間も短くなると考えられています。逆に、絶食期間が長いと腸の粘膜が弱ってしまうというデメリットも指摘されています。

  • 吐き気止めの積極的な使用:
    手術後の吐き気をしっかり抑え、早期の食事再開をスムーズにする目的で、マロピタント(商品名:セレニア®など)という強力な吐き気止めが積極的に使われます。
  • 体への負担が少ない「腹腔鏡手術」:
    一部の施設では、お腹に数か所だけ小さな穴を開けてカメラや器具を入れ、異物を取り出す「腹腔鏡手術」も行われるようになってきました。開腹手術に比べて傷が小さく、術後の痛みが少ないため、猫ちゃんの回復が早いというメリットがあります。