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皮膚疾患の食事管理

 

愛犬のつらい「かゆみ」、原因と食事について獣医さんが教えてくれること

ワンちゃんが体をかきむしったり、皮膚が赤くなったりしているのを見るのは、飼い主様にとって非常につらいことですよね。その原因は、もしかしたら「アレルギー」かもしれません。この資料は、アレルギーと食事の関係、そしてどうすれば食事でワンちゃんを楽にしてあげられるかを解説したものです。

ステップ1:そもそも「アレルギー」って何?

私たちの体には、ウイルスや細菌のような悪い敵が入ってきたときに戦ってやっつける「免疫」という素晴らしい防衛システムがあります。

アレルギーとは、この防衛システムが少し勘違いをして、本来は体に害のないもの(花粉や食べ物など)を「悪い敵だ!」と判断して、過剰に攻撃してしまう状態のことです。この過剰な攻撃が、つらいかゆみや赤みなどの症状を引き起こすのです。

ステップ2:かゆみの二大原因、「食物アレルギー」と「犬アトピー性皮膚炎」

ワンちゃんのかゆみの原因となるアレルギーは、主に2つのタイプに分けられます。

① 食物アレルギー

    • 原因:食事に含まれる特定の成分(そのほとんどがタンパク質です)が敵だと認識されて起こります。いわば、体の「内側から」起こるアレルギーです。

 

    • 症状:かゆみや皮膚の赤みに加えて、下痢や嘔吐といったお腹の症状を伴うことがあります 。

 

  • 症状の出やすい場所:顔(目の周り、口の周り)、耳、背中、そしてお尻の周りなどです。

② 犬アトピー性皮膚炎

    • 原因:花粉、ハウスダスト、ダニといった環境中のアレルゲンが、弱くなった皮膚のバリアを通り抜けて体内に侵入することで起こります。こちらは体の「外側から」くるアレルギーです。
    • 症状:強いかゆみが特徴です。
  • 痒みの出やすい場所:脇の下、お腹、内股、指の間など、皮膚の薄い部分に症状が出やすい傾向があります。

 

もちろん、この両方を併せ持っている「混合型」のワンちゃんもいます。

ステップ3:「皮膚のバリア機能」と「食事」のとても大切な関係

 

ワンちゃんの皮膚は、ただ体を覆っているだけではありません。実は、摂取したタンパク質の約30%が、健康な皮膚と美しい被毛を作るために使われています。皮膚はワンちゃんの体で最大の臓器(体重の約20%を占めます)であり、常に新しい細胞に生まれ変わっているため、たくさんの栄養を必要とするのです。

 

特に「皮膚のバリア機能」は重要です。これは、外部の刺激やアレルゲンの侵入を防ぐ「城壁」のようなもの。この城壁が弱くなると、アトピーの原因となるアレルゲンが簡単に侵入してしまいます。栄養バランスの悪い食事や、亜鉛・銅などが不足した食事では、この城壁がもろくなってしまうことがあります。だからこそ、正しい食事管理は、皮膚の健康を守るための土台となるのです。

ステップ4:原因を突き止めるための最も確実な方法「除去食試験」

「うちの子のかゆみは、食べ物が原因なの?それとも環境?」これをはっきりさせるための最も信頼できる方法が「除去食試験」です 。血液検査などもありますが、それだけでは確定診断は難しいことが多いのです。

【除去食試験のやり方】

 

とてもシンプルですが、ご家族全員の協力が不可欠です。

    • フードを切り替える:獣医師が指示した特別な「療法食」にフードを切り替えます。

 

    • 徹底する1~2ヶ月間、その療法食とお水以外は、絶対に何も口にさせません。おやつ、ガム、人の食べ物のカケラ、サプリメントもすべてお休みです 。ここで一つでも他のものを食べてしまうと、試験が台無しになり、また最初からやり直しになってしまいます。

 

  • 症状を観察する:期間中、皮膚の症状がどう変化するかをじっくり観察します 。

【試験結果からわかること】

    • 症状がすっかり改善した!食物アレルギーの可能性が非常に高いです。原因となる食べ物を避けることで、快適な生活が期待できます。

 

    • 少しは良くなったけど、まだかゆそう…食物アレルギーとアトピー性皮膚炎の混合型が考えられます。まずは食事で改善できる部分を最大限ケアし、残りの症状に対してアトピーの治療を行います。

 

  • まったく変化が見られない…犬アトピー性皮膚炎の可能性が高いです。食事は、皮膚のバリア機能を強化する方向に切り替えて治療を進めます。

ステップ5:アレルギーと戦うための「特別な食事」の仕組み

除去食試験やその後の治療で使われる療法食には、主に3つのタイプがあります。それぞれ、アレルギー反応をどうやって避けるか、という戦略が異なります。

戦略①:『はじめまして』作戦(新奇タンパク食)

 

考え方:アレルギーは、体が「こいつは敵だ!」と覚えているタンパク質に対して起こります。ならば、これまで一度も食べたことのない、体がまだ敵として認識していないタンパク質を与えれば、アレルギー反応は起きないだろう、という考え方です。

    • :これまでチキンやビーフを主食にしていた子に、ダック(鴨)や七面鳥などをタンパク源とするフードを与えます。

 

  • 製品例:「セレクトプロテイン」シリーズ、「セレクトスキンケア」

戦略②:『変装』作戦(加水分解タンパク食)

 

考え方:タンパク質は、アミノ酸がたくさんつながった長い鎖のようなものです。体はこの鎖の「形」を認識して敵か味方か判断します。そこで、あらかじめ工場でこのタンパク質の鎖を細かく分解(加水分解)してしまい、体の免疫システムが「敵の形だ」と気付けないように変装させる作戦です。

    • :大豆などのタンパク質を、アレルギーを起こさないレベルまで細かく分解して使用します。

 

  • 製品例:「低分子プロテイン」シリーズ

戦略③:『究極の変装』作戦(アミノ酸食)

 

考え方:これは②の『変装』作戦をさらに推し進めたものです。タンパク質の鎖を、これ以上分解できない最小単位である「アミノ酸」のレベルまでバラバラにします。アミノ酸の状態では、免疫システムはそれをアレルゲンとして認識することはできません。

    • 特徴:最もアレルギー反応のリスクが低いため、重度のアレルギーを持つ子や、最も正確な結果が求められる除去食試験で使われます。

  製品例:「アミノペプチドフォーミュラ」シリーズ

まとめ:飼い主様へのお願い

ワンちゃんの皮膚の治療は、時間と根気が必要です。特に食事療法は、ご家族の協力なしには成功しません。

    • 効果が出るまで1~2ヶ月はかかります。焦らずじっくり取り組みましょう 。

 

    • 療法食以外のものは与えないというルールを、ご家族全員で守ってください 。

 

  • 多くの場合、食事管理は生涯続きますが、それがワンちゃんの快適な毎日に繋がります 。

つらい症状を和らげ、ワンちゃんが笑顔で過ごせるように、獣医師とチームを組んで一緒に頑張っていきましょう。