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腎臓病のご飯






犬猫の慢性腎臓病(CKD)のすべて


犬猫の慢性腎臓病(CKD)のすべて

第1部:腎臓の重要性とCKDの基礎

腎臓の主な仕事:体のお掃除屋さん

  • 血液をろ過しておしっこを作る:血液中の「老廃物(ゴミ)」をこし取り、尿として体外に排出する。
  • 大切なものは再利用(再吸収): 水分、ミネラル、ブドウ糖など体に必要なものは、賢く血液に戻す。

腎臓を支える小さな働き者:「ネフロン」

  • ネフロンは血液をろ過するフィルターの役割を担い、一度壊れると新しく作られることはない。
  • ネフロンの数(目安):犬:約80万個、猫:約40万個。
  • 猫が腎臓病になりやすい理由:濃い尿を作る能力が優れている反面、常に腎臓に高い負荷がかかっている。

腎臓の知られざる重要な役割

  • 血液を作る指令を出す:赤血球を作るホルモン(エリスロポエチン)を分泌。腎臓病の進行は貧血の原因となる。
  • 血圧をコントロールする:水分量や血管の状態を調整。
  • ビタミンDを活性化する:骨を強くするための形に変える。

慢性腎臓病(CKD)とはどんな病気?

  • 不可逆的(元に戻らない):数ヶ月から数年かけて機能が失われる。治療の目的は進行を遅らせること。
  • 残されたネフロンの過労:正常なネフロンが過重労働となり、病気の進行を加速させる悪循環を生む。
  • 沈黙の病気: 機能の約 2/3(約 67%)が失われるまで、目立った症状が現れにくい。

第2部:診断基準(IRISステージ分類)

国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)の基準に基づき、病気の進行度を分類し、治療計画を立てます。

指標 ステージI(早期) ステージII ステージIII ステージIV(末期)
クレアチニン (mg/dL) 正常値以下 or <1.4 1.4〜2.8 2.9〜5.0 >5.0
SDMA (μg/dL) <18 18〜35 36〜54 >54
UPC比 (蛋白尿) 非蛋白尿 境界的な蛋白尿 (0.2〜0.5) 蛋白尿 >0.5
収縮期血圧(mmHg) 正常圧 >140 軽度高血圧 140〜159 高血圧 160〜179 重度の高血圧 >180
  • SDMA:クレアチニンより早期に異常を検知できる新しい指標。早期発見に重要。
  • 高血圧:腎臓病を悪化させる大きな要因のため、血圧管理も重要。

SDMAとクレアチニンの違い:早期発見の重要性

SDMAは従来のクレアチニンと比較して、腎機能の低下をより早く、正確に検出できる指標です。

項目 SDMA(対称性ジメチルアルギニン) クレアチニン (Cre)
検出のタイミング 腎機能の平均40%喪失で上昇 腎機能の最大75%喪失でようやく上昇
早期発見の可能性 猫で平均17ヶ月、犬で平均9.5ヶ月早く発見できる可能性がある。 早期の腎機能低下を見逃しやすい。
筋肉量の影響 受けにくい(痩せた高齢動物でも正確に評価可能)。 受ける(筋肉量が少ないと、腎機能が悪化していても低く出てしまう)。
臨床的意義 IRISステージIの診断に不可欠。早期介入のチャンスを生む。 IRISステージII以降の中期〜後期の腎機能評価の基本。

第3部:治療の最大の柱「食事管理」(療法食)

食事管理の目的は、残った腎臓を守り、病気の進行を遅らせることと、尿毒症などの症状を和らげることです。

腎臓病用療法食の主要な工夫

工夫 目的
リンの制限 最も重要。過剰なリンが腎臓へのダメージを加速させるのを防ぎ、生存期間の延長効果が期待される。
タンパク質の調整 老廃物(尿毒症の原因)を減らしつつ、消化しやすい良質なタンパク質を適量供給し、筋肉量を維持。
エネルギー強化 食欲不振の子が少量で十分なカロリー(犬猫共に高カロリー)を摂取できるように設計(例: ロイヤルカナン製品は約 380〜393kcal / 100g)。
オメガ3脂肪酸 (EPA・DHA) 腎臓内の炎症を和らげ、保護する作用(火消し役)が期待される。
ナトリウム制限 / アルカリ化 高血圧を防ぎ、弱った腎臓で起こりやすい体の酸性化(代謝性アシドーシス)を防ぐ。
抗酸化物質 活性酸素を無害化し、腎臓の線維化などを防ぎ守る。

犬猫別:主要3社療法食の特徴と注意点

🐱 猫用療法食(便秘対策が重要)

腎臓病の猫は脱水や薬の影響で便秘になりやすく、可溶性食物繊維(サイリウムなど)が配合されたフードが有効です。

製品名 メーカー 便秘対策 (可溶性繊維) 主な特徴
腎臓サポート(各種) ロイヤルカナン サイリウム(オオバコ種皮)配合あり。 早期サポート(ステージI~II)と進行期(スペシャルなど)のラインナップ。嗜好性が高い。
キドニーケア プラス(可溶性繊維) Dr’s Care サイリウム、フラクトオリゴ糖を配合し、便秘対策に特化。 低リン、低ナトリウム設計。便秘傾向のある猫に推奨。
k/d(各種) ヒルズ 全粒穀物など食物繊維源を配合。 早期アシスト(ステージI・II)と通常 k/d で進行度に対応。蛋白尿が多い場合も推奨。

🐶 犬用療法食(膵炎リスクに注意)

犬の腎臓病療法食は高カロリーを確保するため脂質含量が高い傾向があり、膵炎の既往がある場合は特に注意が必要です。

製品名 メーカー 脂質含量 / 膵炎への注意点 主な特徴
腎臓サポート(各種) ロイヤルカナン 高カロリー設計のため脂質含量が高い。膵炎の既往がある場合は獣医師に相談必須。 高嗜好性。
キドニーケア Dr’s Care 高カロリー設計であることが多い。膵炎リスクがあれば脂質含量を確認すべき。 低リン、低ナトリウム設計。
k/d(各種) ヒルズ 高カロリー設計のため脂質含量が高い。膵炎リスク時は極めて低脂肪なフードを検討。 k/d+モビリティは関節ケア成分も含む。

第4部:治療の最終確認ポイント

⭐ 『食べること』が何よりも大切!
  • エネルギー不足は危険:食べないと体重が減り、筋肉が落ちて体力が低下し、病気の進行を早める。
  • 美味しく食べさせる工夫:フードを人肌(38〜39℃)に温めると香りが立ち、食欲を刺激するのに非常に効果的。
  • すべては獣医師の指示で:療法食は、病状、体重、併発疾患(膵炎、高血圧など)に応じて最適なものが異なるため、必ず獣医師の指導のもとで選択・変更すること。