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腸のがん

犬と猫の消化管腫瘍に関する最新情報

1. 病状

犬の腸の中で最もよく見られる腫瘍はリンパ腫で、次に多いのは腺癌です。腺癌は消化管腫瘍の約20~35%を占め、大腸の腫瘍の約60%が腺癌です。犬と猫では発生しやすい場所が異なり、犬では結腸~直腸に多く発生します。オスの方が多く、コリーでは発生リスクが高いとされています。

【猫における発生状況】
猫の消化管腫瘍は犬よりも発生頻度が低いとされますが、発生する場合は腺癌やリンパ腫が主要な腫瘍種として挙げられます。特に猫の消化管リンパ腫は、小腸(特に回腸)に発生しやすく、高齢猫で多く見られます。また、猫の腸管腺癌は犬ほど頻度が高くないものの、小腸や大腸に発生し、浸潤性が高く、病理組織学的に悪性度が高い場合が少なくありません。いくつかの品種で消化管腺癌の発生が示唆されている報告もあります。

症状は発生部位と関連しており、食欲不振、体重減少、嘔吐、下痢などが見られます。小腸で発生する場合は黒い便が出ることもあります。結腸~直腸で発生する場合は血便や便秘が見られることがあります。また、猫では症状が非特異的で進行まで気づきにくいことも多く、診断時には既に進行しているケースも少なくありません。

2. 診断

血液検査では、腫瘍による二次的な変化(脱水や貧血など)がよく見られますが、特に貧血や低アルブミン血症に注意が必要です。貧血は小腸腺癌の予後不良因子として報告されており、低アルブミン血症は消化管手術後の癒合不全のリスクファクターとして報告されています。

腸の腫瘍の診断では、超音波検査が有用です。腫瘍の場合、正常な腸の層構造が消失したり、肥厚(10mm以上)などの異常所見が見られることがあります。また、多くの場合で低エコーの病変が見られます。

【猫における診断】
猫の消化管腫瘍診断では、犬と同様に超音波が有用です。猫のリンパ腫では、腸壁の層構造の乱れや均一な低エコー性病変が特徴的なことが多いです。

特にリンパ腫は腸壁が比較的均一に肥厚することがあり、腺癌はより局所的・不均一な腫瘤形成や周囲組織への浸潤が特徴となります。
近年は内視鏡検査やCT、MRIなど高度な画像診断が猫においても活用され、腫瘍の正確な位置や広がり、リンパ節転移の有無をより詳細に評価することが可能になっています。

内視鏡下生検は消化管腫瘍の診断率向上に有用ですが、深部浸潤性病変に対しては十分な組織が得られない場合もあり、場合によっては外科的生検が必要になります。

3. 治療方法

小腸腺癌の場合、腫瘍が孤立している場合には、3cmの手術マージンでの完全切除が十分であるとされていますが、基本的には可能な限り4~8cmの十分なマージンを確保することが望ましいです。

小腸の75%以上を切除すると、短腸症候群を引き起こすことが報告されており、犬の場合は約30~40cmの小腸を残すことで消化管の機能を保持できるとされています。

同時に切除範囲のリンパ節についても調べ、腫大が認められる場合には切除やFNA・組織検査を行うことがあります。リンパ節転移は予後不良因子として報告されることもあります。

限局性の直腸腺癌の場合、肛門からのアプローチによって手術で切除を行います。腺癌の場合、最初の手術方法の選択は直腸全層引き抜き術です。引き抜ける直腸の長さは体格に依存しますが、4cm以上の切除により手術後の合併症のリスクが高まることが報告されています。粘膜に限局していることが明らかな場合は粘膜プルスルーが適応となりますが、実際には手術前に病変の浸潤性を評価することは困難です。

外科的切除が困難な場合には、人工肛門形成術が検討されることもあります。

転移や血管浸潤を伴う腸管腺癌の場合、手術後に化学療法が考慮されることもありますが、現時点ではその効果は明らかではありません。少数の報告によれば、ドキソルビシン塩酸塩が使用されることがあります。

【猫における治療】
猫の消化管リンパ腫は化学療法に反応しやすいとされ、CHOPプロトコール(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンなど)やクロラムブシル+ステロイドを用いた治療で長期寛解を得られるケースが少なくありません。猫の消化管リンパ腫ではステロイド単独でも一部の症例で臨床症状の改善が見られますが、より長期的な生存を目指すには多剤併用化学療法が推奨される場合があります。近年では小分子標的薬や免疫療法などの新しい治療法が研究段階で検討されていますが、臨床応用は限定的です。

4. 治療に関する注意点

腸管腺癌の化学療法に関する根拠が十分ではないため、外科的切除が主な治療方法となります。放射線治療は、周囲の臓器への放射線の影響のリスクがあるため、お勧めできません。早期の積極的な外科的介入が必要であり、手術前の細胞検査や画像診断による病期分類が正確に行われるべきです。

外科的切除により、無治療に比べて比較的良い治療結果が期待できます。現状では、外科的切除以外の有効な治療法が存在しません。

【猫における注意点】
猫では腺癌の場合、診断時にはすでに進行しているケースが多く、完全切除が困難な場合もあります。このような場合、症状緩和を目的とした姑息的な外科処置や、化学療法の併用が検討されますが、十分なエビデンスがないため、治療方針は症例ごとにカスタマイズされます。リンパ腫の場合には化学療法が有力な選択肢ですが、腺癌では未確立な点が多いことに留意が必要です。

5. 看護のポイント

腸の繋がりが外れることによる腹膜炎は、重大な手術後の合併症として考慮されるため、入院中は定期的に体温測定、CBC、CRP、アルブミン値などの検査を行う必要があります。アルブミン値が手術後に2g/dL以下が続くと、腸の繋がりが外れる危険性が高まるため、注意が必要です。

食事は手術後2日目から始め、少しずつ量を増やしていくべきであり、腹痛や嘔吐、血便などの症状にも注意を払う必要があります。

【猫における看護ポイント】
猫ではストレスや術後の食欲不振が顕著に現れることがあり、術後の給餌管理は特に重要です。嗜好性の高いフードの選択や、場合によっては経管栄養によるサポートも検討されます。また、猫では術後疼痛管理を適切に行うことが回復を促進し、食欲回復やQOL改善に寄与します。
術後ケアにおいては、吐き気や嘔吐の早期発見と対処、十分な水分補給、そして必要に応じた抗生物質の使用が考慮されます。

🌷消化管穿孔について知っておくべきこと

消化器型リンパ腫の穿孔のリスクは約17%とされ、突然の吐き気や元気のなさなどの症状が出た場合、すぐに診察が必要です🚨。低アルブミンにも注意が必要です💡

腹水の検査では細菌が確認できなくても、消化管穿孔の可能性を疑い、迅速に対処することが求められます🔍。特に胃や十二指腸の穿孔は、胃酸の影響で感染の程度が変わってきます。胃液により細菌が殺菌されることが知られており、十二指腸穿孔では胃酸の分泌が亢進し、症状も強くなります🌡️

診断のためのエコー検査で腹水や消化管内の液体貯留、腹部レントゲン検査で腹腔内の遊離ガスなど、消化管穿孔の兆候を的確にキャッチすることができます。

【猫における消化管穿孔】
猫でも消化管穿孔は生命を脅かす緊急事態であり、腫瘍や異物、リンパ腫などによる消化管壁の脆弱化が原因となることがあります。猫は症状が不明瞭なことも多く、軽度の元気消失や食欲低下、腹部疼痛のみで進行している可能性があるため、注意深い観察が必要です。穿孔疑いの際は直ちに診察を受け、手術的介入や集中治療を含めた迅速な対応が求められます。