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血液検査で「グロブリンが低い」と言われたとき、何を考えるべきかを整理します。


検査メモ


血液検査で「グロブリンが低い」と言われたとき、何を考えるべきかを整理します。

この記事で扱う「グロブリン低下」とは


血清総蛋白のうち、アルブミン以外の分画をまとめて「グロブリン」と呼ぶことが多く、免疫グロブリン(抗体)を含む複数成分の総称です。したがってグロブリン低下は「抗体が少ない」可能性も、「腸や腎臓から蛋白が漏れている」可能性も、「輸液などで薄まっている」可能性もあり、原因を3つの軸(産生低下/喪失/希釈)で整理すると鑑別が明確になります。

まずは全体像:3つの軸で考える

  • 産生低下(作れない):免疫不全、骨髄・リンパ系の異常、重度の全身疾患、薬剤影響などでグロブリン(特に免疫グロブリン)が作れない。
  • 喪失(外に漏れる):腸(蛋白漏出性腸症)や腎臓(蛋白漏出性腎症)などから蛋白が失われ、結果としてグロブリンも低下する。
  • 希釈(薄まる):大量輸液などで血液成分が相対的に薄まり、グロブリンが低く見える。

産生低下(作れない)で考える鑑別

  • 免疫不全(先天性/後天性)
    先天性では若齢からの反復感染、治りにくい皮膚炎・外耳炎・肺炎など、ワクチン反応不良が手がかりになります。後天性では、免疫抑制や全身状態の低下が背景にあり、感染が重症化・遷延しやすくなります。
  • 薬剤・治療の影響
    ステロイド、シクロスポリン、抗がん剤など免疫抑制に寄る治療は、免疫グロブリンの産生・免疫応答に影響し得ます。数値の変化がいつから始まったか、治療開始時期と合わせて確認します。
  • 骨髄・リンパ系の問題
    骨髄抑制やリンパ球系の異常があると、抗体産生が落ちることがあります。血球減少(白血球・リンパ球など)の併発、慢性の炎症や腫瘍の存在を合わせて評価します。
  • 重度の慢性疾患・栄養不良
    長期にわたる消耗性疾患、食欲不振、吸収不良などが背景にある場合、全体として蛋白合成・免疫機能が落ち、グロブリンも低下することがあります。体重推移や筋肉量、慢性消化器症状の有無を確認します。
  • 肝機能低下
    一般にアルブミン低下が目立ちやすい一方、重度の肝障害では蛋白代謝全体が影響を受け、グロブリンも低下することがあります。肝酵素、胆汁酸、凝固系、画像所見などを総合して判断します。

喪失(外に漏れる)で考える鑑別

  • 消化管からの喪失:蛋白漏出性腸症(PLE)
    腸の炎症やリンパ管の障害、腫瘍などで腸管内へ蛋白が漏れると、血中蛋白が低下します。典型的には低アルブミンと低グロブリンが同時に起こりやすいのが特徴です。慢性下痢、体重減少、浮腫、腹水などが手がかりになります。
  • 腎臓からの喪失:蛋白漏出性腎症(PLN)
    糸球体から蛋白が尿へ漏れる状態です。一般にアルブミンが先に低下しやすいものの、進行例ではグロブリンも低下し得ます。尿蛋白の評価(尿蛋白/クレアチニン比など)と併せて、血圧や腎機能、浮腫・腹水の有無を確認します。
  • 出血・滲出(慢性)
    慢性的な出血や、広範囲の滲出性皮膚病変、熱傷や大きな創傷などでも蛋白が失われ、グロブリン低下につながることがあります。病変の範囲、出血の継続性、貧血や鉄欠乏の兆候も合わせて確認します。

希釈(薄まる)で考える鑑別

  • 大量輸液後・循環血漿量の増加
    入院治療での輸液負荷後などに、血液成分が相対的に薄まって数値が下がることがあります。輸液量や投与期間、採血タイミング、ヘマトクリットや電解質の変化も合わせて考えます。
  • 脱水補正後に見えてくる“本当の値”
    脱水があると蛋白は高く見え、補液後に低く見えることがあります。前後での変化を追い、単回の値で判断しないことが大切です。

臨床で迷いにくくする「見方」のポイント

重要:
グロブリン低下は「どこで何が起きているか」を決め打ちできる所見ではありません。アルブミンとの組み合わせA/G比尿蛋白消化器症状感染の起きやすさなどを一緒に見て原因に近づきます。

特に感染症が重症化・遷延しやすい背景が隠れていることがあるため、皮膚炎や外耳炎、呼吸器感染、術後感染などの既往がある場合は注意深く評価します。

A/G比での整理

総蛋白の内訳をつかむために、アルブミンとグロブリンの比(A/G比)を確認します。一般に、グロブリンが相対的に増える病態ではA/G比が低くなり、グロブリンが低い場合はA/G比が高くなる傾向があります。ただし、脱水や補液、炎症の強さ、肝機能などで動くため、単回の値だけで結論を出さず、経時変化と臨床症状を合わせて判断します。

電気泳動で“何が低いのか”を確かめる

「グロブリン」と一括りにされている成分が、実際にはどの分画(特にγ分画=免疫グロブリン領域)で低下しているかを確認するのに、血清蛋白電気泳動は有用です。γ分画の低下が明確で、反復感染や治りにくさがある場合は免疫不全の評価を、アルブミンも一緒に低い場合は喪失(腸・腎)を優先して評価します。

よく使う“実践フロー”(簡略)

  • まずアルブミンも低いかを確認し、低い場合は腸(PLE)腎(PLN)の評価を優先します。
  • 尿検査で尿蛋白の増加があれば腎からの喪失を疑い、血圧や腎機能、浮腫などを合わせて評価します。
  • 慢性下痢、体重減少、腹水、浮腫などがあれば腸からの喪失を疑い、消化管評価へ進みます。
  • アルブミンが保たれていてグロブリンが低い場合は、産生低下(免疫不全、薬剤、骨髄・リンパ系、重度慢性疾患)と、輸液などによる希釈を検討します。
  • 若齢発症、反復感染、治りにくさ、ワクチン反応不良があれば、先天性免疫不全を含めた評価を考えます。

まとめ
グロブリン低下は、作れない漏れる薄まるのどこかで起きている現象です。特に低アルブミンを伴う場合は腸(PLE)や腎(PLN)を最優先で評価し、単独低下の場合は免疫不全や薬剤、骨髄・リンパ系、希釈を含めて全体像から原因に迫ります。

診察では、症状(下痢・体重減少・浮腫・感染の起きやすさ)と、血液検査(アルブミン、A/G比)、尿検査(尿蛋白)、必要に応じて血清蛋白電気泳動などを組み合わせて評価していきます。