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預かりやホテルでパニックになる犬へ ― それは“しつけ”ではなく、怖さのサインです

「ホテルや預かりでパニックになってしまう」「怖がって吠える・唸る・噛みそうになる」――このような出来事があると、飼い主さんは強い不安や罪悪感でいっぱいになります。

けれど多くの場合、それはしつけや性格の問題ではなく、恐怖と不安が限界を超えた“パニック反応”です。この記事は、同じ悩みを抱える飼い主さんが状況を整理し、冷静に次の一手を考えられるようにまとめたものです。

まず知ってほしいこと:攻撃性に見える行動の正体

病院・ホテル・トリミングなど、知らない環境/知らない人/飼い主さん不在が重なると、犬は「何が起こるかわからない」「逃げられない」と感じやすくなります。

その結果、吠える・唸る・突進する・噛みつこうとする、という行動が出ることがあります。これは「悪意」ではなく、怖くて自分を守ろうとする行動です。

  • 犬は「敵か味方か」を瞬時に判断できないほど怖いと、体が防衛モードになります。
  • パニックが強いほど、普段できること(待てる・触らせる・水を飲む)まで難しくなることがあります。
  • 飼い主さんが落ち着いている時は落ち着けるのに、環境が変わると一気に崩れるのは珍しくありません。

なぜ「預かり」で急に深刻になりやすいのか

預かりやホテルは、犬にとって「生活が丸ごと変わる出来事」です。診察室では頑張れても、バックヤードやケージで突然不安が爆発することがあります。

ポイント:「できていたことができなくなる」のは、根性やわがままではなく、恐怖で脳の処理が追いついていない状態のことがあります。


この状態では、水が飲めなくなる呼吸が荒くなるなど、体調面のリスクが一気に上がります。

「水が飲めない」は命の問題になり得ます

パニックで水を飲めなくなると、脱水・熱中症・循環不全など、短時間でも体調が崩れる可能性があります。特に興奮が続くと、体温が上がりやすく、急変リスクが高まります。

  • 「飲める環境」を最優先に考えることが、行動問題の前に重要になる場合があります。
  • 水皿がひっくり返る・人の出入りが多い・周囲の音が強いと、さらに飲めなくなることがあります。
  • 「預ける」よりも「落ち着ける場所へ早めに移動する」判断が、結果として安全なことがあります。
  • 預かり中に「飲水が確保できない」兆候がある場合は、早めの対応が大切です。
  • 帰宅後もしばらくは、落ち着いた環境でこまめに飲水を促し、様子を見守ってください。
  • 呼吸が荒い・舌の色がいつもと違う・ぐったり・吐く・下痢が続くなどがあれば、無理をせず早めに相談してください。
  • 「叱る」「我慢させる」より先に、体調と安全の確保が優先です。

体格と犬種が「周囲の恐怖」と「健康リスク」を増やすことがあります

同じ行動でも、体が小さければ「怖がりだね」で済むことが、体が大きいと周囲に与える影響が大きくなります。これは犬が悪いのではなく、“事故になった時の規模”が変わるという現実です。

また短頭種では、興奮によるパンティングが続くと呼吸器の負担が増えやすく、健康リスクが高まりやすい傾向があります。行動面だけでなく、「落ち着けること」そのものが健康管理になる場合があります。


「噛んでしまったらどうしよう」…飼い主さんが一番つらいポイント

過去に噛みつきがあった場合、飼い主さんが「また起きたらどうしよう」と強い不安を抱くのは当然です。大切なのは、犬を責めることでも、飼い主さんが自分を責めることでもありません

必要なのは「事故が起きない仕組みを作ること」です。事故は、犬の気持ちだけでなく、環境・距離・タイミングが重なって起こります。

安全の考え方:「うちの子が悪いから」ではなく、“近づけない・触らせない・興奮させない”を設計するという視点が大切です。


病院・待合・通路など第三者がいる場所では、「距離をとる」「声をかけて近づかせない」を最優先にしてください。

環境選びで、結果が大きく変わることがあります

同じ犬でも、場所によって落ち着ける/落ち着けないがはっきり分かれることがあります。たとえばトリミングでは問題なくできるのに、病院のバックヤードでは強いストレスが出る、ということがあり得ます。

  • 「ここは安全」と犬が理解できる場所では、驚くほど落ち着いて行動できることがあります。
  • 今後の処置は、可能な限り診察室で飼い主さん同席など、落ち着きやすい形を優先するのが安全なことがあります。
  • “預かってからやる”が難しい場合でも、外来でできる選択肢を組み合わせられることがあります。

トレーニングは「厳しく直す」ではなく「安心の作り方を学ぶ」こと

噛みつきや強い警戒がある子へのサポートは、特別なことではありません。専門のトレーナーが、声のトーン、叱るタイミング、落ち着かせる導線、家庭内のルールなどを具体的に教えてくれることがあります。

「犬を支配する」方向ではなく、犬が「人は常に怖い存在ではない」と学べるように、安全な範囲で経験を積み重ねることが軸になります。

  • 単発でも良いので、家庭訪問や個別指導の形が合うことがあります。
  • 「できないこと」を増やすのではなく、「できる形」を探すのが近道になることがあります。

飼い主さんへ:自分を責めないための整理のしかた

「預けた自分が悪かったのでは」「これから先どうしたらいいのか」と悩むほど、飼い主さんは真剣に向き合っています。ここで大切なのは、反省ではなく次に安全にするための情報整理です。

落ち着くための視点:「この子は異常なのか」ではなく、“どの条件が重なると怖くなるのか”を知ることが第一歩です。


不安が強い子ほど、環境の差を敏感に感じ取ります。だからこそ、合う環境を選べた時に、驚くほど良い表情が戻ることもあります。

今日からできる「安全」の具体策

  • 病院や人がいる場所では、距離をとる。触ろうとする人には、穏やかに「近づかないでください」と伝える。
  • 落ち着ける導線を作る(混雑を避ける時間、待合では端に、車待機など)。
  • 「預ける必要がある場面」を最小化し、可能なものは飼い主同席で行う。
  • 預かりが必要な場合は、飲水・呼吸・興奮の観察を最優先にして、難しければ早めに方針を切り替える。
  • 家庭では「できた」を積み上げる。怖がる刺激は、無理に近づけず、安全な距離から短く経験させる。
  • 必要なら、専門家(トレーナー)と一緒に「声のトーン」「タイミング」「落ち着かせ方」を整える。

まとめ:大切なのは「正しさ」より「安全」

パニックや攻撃的に見える行動が出た時、飼い主さんは「なんとか直さなきゃ」と焦りやすくなります。けれど本当に大切なのは、まず命と安全を守る設計です。

この子が安心できる環境を選ぶこと、無用な接触を避けること、そして必要なら専門家と一緒に「落ち着ける形」を作ること。これらは逃げではなく、前向きで責任ある選択です。

もし今、不安でいっぱいでも大丈夫です。冷静になって「安全にできる形」を一つずつ増やしていけば、犬も飼い主さんも、少しずつ楽になっていけます。