診察時間
午前9:00-12:00
午後15:00-18:00
手術時間12:00-15:00
水曜・日曜午後休診
本日は、愛犬・愛猫の命を守るために、あえて非常に厳しい現実、「一次診療(当院)と高度医療の決定的な違い」、そして「命との向き合い方」についてお話しします。
「少しでも良い治療を」と、ご自身で高度医療センターや夜間救急(ER)を探され、受診される飼い主様が増えています。
しかし、「かかりつけ医を通さず勝手に行き、都合が悪くなったら戻ってくる」あるいは「ERの医師の提示する入院指示を拒否して、無理やり連れ帰る」という行動が、どれほど危険なことか。
準備なしに戻ってこられた時、私たちは「助けたくても、手が出せない」状況があり得るのです。
最も恐ろしいケースをお話しします。
他院やERで検査をした際、以下の数値が異常に高いと言われたことはありませんか?
これらが高い場合、医学的に見て「いつ急変して亡くなってもおかしくない(DIC:播種性血管内凝固の一歩手前)」という極めて危険な状態です。
全身の血管で血が固まり始め、臓器が壊死していく状態であり、本来であれば、即入院して24時間の集中管理下に置かなければなりません。
【絶対に知っておいてほしいリスク】
この状態で「入院は可哀想だから」「予算がないから」と入院を拒否し、無理やり連れ帰って「あとは近所の先生へ」と当院に来られても、当院にはそれを救う術がありません。
当院の夜間対応には限界があります。
当院は、大学病院やERのような「24時間有人監視体制」ではありません。
夜間はスタッフが不在となり、無人になる時間帯があります。DICリスクのある不安定な動物を、夜間にモニター監視なしで預かることは不可能です。
つまり、ERでの入院を断って当院へ来るということは、「急変しても誰にも気づかれない環境に置く」ことを選ぶのと同じなのです。
高度医療センターで治療を受けていた動物、特に入退院を繰り返している動物は、「多剤耐性菌(普通の抗生剤が効かない強力な菌)」を持っているリスクがあります。
大学病院やERでは、これに対抗するために「カルバペネム系」などの非常に強力な、いわゆる「切り札」となる特殊な抗生剤を使用します。
しかし、私たちのような一次診療施設では、この「カルバペネム系」などの特殊抗生剤を常備していません。
これらは使用期限も短く、厳重な管理が必要なため、一般的な動物病院には置いていないのが普通です。
もし、詳細な引継ぎがないまま、耐性菌感染のリスクがある状態で戻ってこられ、急に発熱などを起こしたとしても、当院にある一般的な抗生剤では全く歯が立ちません。
「向こうで使っていた薬がない」という事実が判明した時には、もう手遅れです。
だからこそ、事前に「どんな菌がいて、どの薬が必要か」という連携がなければ、怖くて受け入れられないのです。
最近、ご自身でインターネット等で病院を探し、受診されるケースがあります。
その行動力は素晴らしいですが、一つだけ忘れないでください。
「ご自身で探した病院の協力は、ご自身で取り付けてください」
相手先の病院から「診療情報提供書(紹介状・経過報告書)」をもらわずに、「向こうの先生が良いと言ったから、あとはこっちで」と戻ってこられても、私たちは目隠し状態で治療を引き継ぐことになります。
特に、抗がん剤や特殊な処置を行った場合、詳細なデータがなければ、怖くて次の処置ができません。
「連携不足」は、医療ミスに直結します。
ご自分で病院を選ばれた以上、「そちらの先生にお願いして、当院への報告書を書いてもらう」のは、飼い主様の責任です。
その協力が得られない場合は、当院での継続治療をお断りせざるを得ません。
高度医療は高額です。
しかし、最初の手術や処置で予算を使い切り、「地元に戻ってからの維持費が出せない」「副作用止めの薬が買えない」となってしまっては、それまでの痛い思いが無駄になってしまいます。
「高度医療という飛行機」に乗るなら、着陸するまでの燃料(費用)が必要です。
途中で燃料が切れれば、あとは墜落するしかありません。
これは医療ではありません。墜落を待つだけの時間になってしまいます。
「高度医療センターに行く」と決めたなら、退院後の維持治療費まで含めて計画を立てるのが、飼い主様の責任です。
重篤な病気は、分単位・時間単位で状況が悪化します。
「入院はしたくない」「でも治療はしたい」「あっちの病院は高い、こっちはどうだ」……
そうやって条件闘争や駆け引きをしている間にも、動物の体は確実に限界に近づいています。
私たち獣医師が提示する選択肢は、動物の命を救うための「最善の手」です。
そこに「駆け引き」を持ち込むと、失うのはお金ではなく、取り返しのつかない「命の時間」です。
重篤な病気になった時、藁にもすがる思いで「ネットで見た方法を試してほしい」「リスクが高くても、死んでもいいから抗がん剤を打ってほしい」と願うお気持ち。痛いほど分かります。
しかし、当院では医学的根拠(エビデンス)のない治療や、メリットよりも「苦しみや死のリスク」が上回る無謀な治療は、断固としてお断りしています。
【当院がお引き受けできないこと】
なぜなら、動物たちには「明日のために、今日の地獄を耐える」という概念がないからです。
人間ならば、「辛い副作用を乗り越えれば、未来がある」という希望を持って頑張れるかもしれません。
しかし、動物たちは、過去でも未来でもなく、「今、この瞬間」だけを生きています。
医学的に見て「命を縮めるだけだ」と分かっている状態で、一か八かの治療を強行することは、動物にとって「理由の分からない虐待」でしかありません。
もしその治療が、動物の苦痛を和らげるためではなく、「何もせずに見送るのが怖い」という人間の心を守るための治療になってしまっているなら、私たちはプロとしてその手をお止めします。
当院では、治療の甲斐がなく、動物が「耐え難い苦痛」に晒され続けている場合に限り、獣医師から「安楽死」という選択肢をご提案することがあります。
これは「命を奪うこと」ではなく、「苦しみから解放してあげること」です。
これらのような状況で、回復の見込みがなく、ただ苦痛の時間だけが過ぎていく場合。
その苦しみを取り除く最後の手段として安楽死を提案することは、獣医師としての「最後の責任」だと考えています。
【重要:安楽死をお断りするケース】
ただし、安楽死はあくまで「動物の苦痛を取り除くための医療行為」です。
人間の都合による「処分」ではありません。
以下のような理由での安楽死依頼は、一切お断りします。
当院は保健所ではありません。
医学的な正当性(回復不能な苦痛)がない限り、安楽死を行うことは絶対にありません。
安楽死のご相談は、これまで当院で治療を続けてきた患者様、あるいは十分な診察と検査を経て「医学的に妥当である」と当院が判断した場合のみ適用されます。
厳しい言い方になりましたが、これが医療現場のリアルです。
当院は、飼い主様のエゴではなく、「物言わぬ動物たちの代弁者」として、その命に向き合い続けます。
当院は魔法使いではありません。設備も薬もない状態で、高度医療の代わりはできません。
大切な家族を守るために、どうか「正しい医療のかかり方」と「覚悟」を持って、私たちと連携を取ってください。
皆様のご理解とご協力をお願いいたします。