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高度医療・ER受診の前に知ってほしい「命の分かれ道」:連携なき受診と入院拒否の致命的リスク

本日は、愛犬・愛猫の命を守るために、あえて非常に厳しい現実、「一次診療(当院)と高度医療の決定的な違い」、そして「命との向き合い方」についてお話しします。

「少しでも良い治療を」と、ご自身で高度医療センターや夜間救急(ER)を探され、受診される飼い主様が増えています。
しかし、「かかりつけ医を通さず勝手に行き、都合が悪くなったら戻ってくる」あるいは「ERの医師の提示する入院指示を拒否して、無理やり連れ帰る」という行動が、どれほど危険なことか。

準備なしに戻ってこられた時、私たちは「助けたくても、手が出せない」状況があり得るのです。

「CRP・TAT高値」での入院拒否は、命取りです

最も恐ろしいケースをお話しします。
他院やERで検査をした際、以下の数値が異常に高いと言われたことはありませんか?

  • CRP(炎症数値)
  • TAT(血液凝固マーカー)

これらが高い場合、医学的に見て「いつ急変して亡くなってもおかしくない(DIC:播種性血管内凝固の一歩手前)」という極めて危険な状態です。
全身の血管で血が固まり始め、臓器が壊死していく状態であり、本来であれば、即入院して24時間の集中管理下に置かなければなりません。

【絶対に知っておいてほしいリスク】


この状態で「入院は可哀想だから」「予算がないから」と入院を拒否し、無理やり連れ帰って「あとは近所の先生へ」と当院に来られても、当院にはそれを救う術がありません。

当院の夜間対応には限界があります。
当院は、大学病院やERのような「24時間有人監視体制」ではありません。
夜間はスタッフが不在となり、無人になる時間帯があります。DICリスクのある不安定な動物を、夜間にモニター監視なしで預かることは不可能です。

つまり、ERでの入院を断って当院へ来るということは、「急変しても誰にも気づかれない環境に置く」ことを選ぶのと同じなのです。

「耐性菌」と「抗生剤」の壁があります

高度医療センターで治療を受けていた動物、特に入退院を繰り返している動物は、「多剤耐性菌(普通の抗生剤が効かない強力な菌)」を持っているリスクがあります。

大学病院やERでは、これに対抗するために「カルバペネム系」などの非常に強力な、いわゆる「切り札」となる特殊な抗生剤を使用します。
しかし、私たちのような一次診療施設では、この「カルバペネム系」などの特殊抗生剤を常備していません。
これらは使用期限も短く、厳重な管理が必要なため、一般的な動物病院には置いていないのが普通です。

もし、詳細な引継ぎがないまま、耐性菌感染のリスクがある状態で戻ってこられ、急に発熱などを起こしたとしても、当院にある一般的な抗生剤では全く歯が立ちません。

「向こうで使っていた薬がない」という事実が判明した時には、もう手遅れです。
だからこそ、事前に「どんな菌がいて、どの薬が必要か」という連携がなければ、怖くて受け入れられないのです。

ご自身で探した病院の場合、連携の責任は「飼い主様」にあります

最近、ご自身でインターネット等で病院を探し、受診されるケースがあります。
その行動力は素晴らしいですが、一つだけ忘れないでください。

「ご自身で探した病院の協力は、ご自身で取り付けてください」

相手先の病院から「診療情報提供書(紹介状・経過報告書)」をもらわずに、「向こうの先生が良いと言ったから、あとはこっちで」と戻ってこられても、私たちは目隠し状態で治療を引き継ぐことになります。

特に、抗がん剤や特殊な処置を行った場合、詳細なデータがなければ、怖くて次の処置ができません。
「連携不足」は、医療ミスに直結します。
ご自分で病院を選ばれた以上、「そちらの先生にお願いして、当院への報告書を書いてもらう」のは、飼い主様の責任です。
その協力が得られない場合は、当院での継続治療をお断りせざるを得ません。

予算が尽きれば、治療は「墜落」します

高度医療は高額です。
しかし、最初の手術や処置で予算を使い切り、「地元に戻ってからの維持費が出せない」「副作用止めの薬が買えない」となってしまっては、それまでの痛い思いが無駄になってしまいます。

「高度医療という飛行機」に乗るなら、着陸するまでの燃料(費用)が必要です。
途中で燃料が切れれば、あとは墜落するしかありません。

  • 「予算オーバーなので、必要な検査を省いてください」
  • 「安い薬に変えてください」

これは医療ではありません。墜落を待つだけの時間になってしまいます。
「高度医療センターに行く」と決めたなら、退院後の維持治療費まで含めて計画を立てるのが、飼い主様の責任です。

「駆け引き」をしている時間はありません

重篤な病気は、分単位・時間単位で状況が悪化します。
「入院はしたくない」「でも治療はしたい」「あっちの病院は高い、こっちはどうだ」……
そうやって条件闘争や駆け引きをしている間にも、動物の体は確実に限界に近づいています。

私たち獣医師が提示する選択肢は、動物の命を救うための「最善の手」です。
そこに「駆け引き」を持ち込むと、失うのはお金ではなく、取り返しのつかない「命の時間」です。

「死んでもいいからやってほしい」は、愛情ではありません

重篤な病気になった時、藁にもすがる思いで「ネットで見た方法を試してほしい」「リスクが高くても、死んでもいいから抗がん剤を打ってほしい」と願うお気持ち。痛いほど分かります。
しかし、当院では医学的根拠(エビデンス)のない治療や、メリットよりも「苦しみや死のリスク」が上回る無謀な治療は、断固としてお断りしています。

【当院がお引き受けできないこと】

  • 医学的根拠のない民間療法や、ネットの情報を鵜呑みにした実験的な治療
  • 「数値が悪くてもいいから打て」という、死期を早めるだけの抗がん剤投与
  • 動物の苦痛を取り除くことより、飼い主様の「満足」を優先する行為

なぜなら、動物たちには「明日のために、今日の地獄を耐える」という概念がないからです。

人間ならば、「辛い副作用を乗り越えれば、未来がある」という希望を持って頑張れるかもしれません。
しかし、動物たちは、過去でも未来でもなく、「今、この瞬間」だけを生きています。

医学的に見て「命を縮めるだけだ」と分かっている状態で、一か八かの治療を強行することは、動物にとって「理由の分からない虐待」でしかありません。

もしその治療が、動物の苦痛を和らげるためではなく、「何もせずに見送るのが怖い」という人間の心を守るための治療になってしまっているなら、私たちはプロとしてその手をお止めします。

「安楽死」という、最後の医療行為について

当院では、治療の甲斐がなく、動物が「耐え難い苦痛」に晒され続けている場合に限り、獣医師から「安楽死」という選択肢をご提案することがあります。

これは「命を奪うこと」ではなく、「苦しみから解放してあげること」です。

  • 呼吸ができない(胸水・肺水腫など)
    陸上で溺れているのと同じ状態で、一分一秒が窒息の恐怖との戦いです。
  • コントロールできない痙攣発作
    意識が戻らないまま、生死の境を彷徨う発作が止まらない状態です。
  • 骨を破壊する激痛(骨肉腫など)
    最強の鎮痛剤を使っても痛みが取れず、眠ることさえできない状態です。

これらのような状況で、回復の見込みがなく、ただ苦痛の時間だけが過ぎていく場合。
その苦しみを取り除く最後の手段として安楽死を提案することは、獣医師としての「最後の責任」だと考えています。

【重要:安楽死をお断りするケース】


ただし、安楽死はあくまで「動物の苦痛を取り除くための医療行為」です。
人間の都合による「処分」ではありません。

以下のような理由での安楽死依頼は、一切お断りします。

  • 「介護が面倒になったから」
  • 「夜鳴きがうるさいから」
  • 「引っ越すから飼えなくなった」
  • 「治療費を払いたくないから」

当院は保健所ではありません。
医学的な正当性(回復不能な苦痛)がない限り、安楽死を行うことは絶対にありません。
安楽死のご相談は、これまで当院で治療を続けてきた患者様、あるいは十分な診察と検査を経て「医学的に妥当である」と当院が判断した場合のみ適用されます。


まとめ:大切な家族を守るために

厳しい言い方になりましたが、これが医療現場のリアルです。

当院は、飼い主様のエゴではなく、「物言わぬ動物たちの代弁者」として、その命に向き合い続けます。
当院は魔法使いではありません。設備も薬もない状態で、高度医療の代わりはできません。

大切な家族を守るために、どうか「正しい医療のかかり方」と「覚悟」を持って、私たちと連携を取ってください。
皆様のご理解とご協力をお願いいたします。