診察時間
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手術時間12:00-15:00
水曜・日曜午後休診
当院における外科手術の論理的な考え方と、実際の症例について共有します。
今回は、犬に非常に多い「乳腺腫瘍」の基礎知識から、高齢かつ重度の心疾患を抱えた患者さんに対する「術式の使い分け」という選択、そして術後管理のリアルな実態までをお話しします。
手術の痛みを恐れるあまり放置するリスクと、心不全の麻酔リスクという相反する問題にどう向き合うか、当院の判断基準をお伝えします。
まず、前提となる「犬の乳腺腫瘍」という疾患について解説します。これは未避妊の中高年のメス犬で非常に発生リスクが高い腫瘍です。
乳腺腫瘍の外科手術には、大きく分けて4つの段階(術式)があります。切除範囲が広いほど将来の再発リスクは下がりますが、身体へのダメージ(侵襲)は大きくなります。
今回ご報告するのは、13歳の小型犬(体重約6.35kg)のケースです。この患者さんは、右側の乳腺に多発するしこり(大小複数)、食事の際に物理的に邪魔になっていた舌の腫瘍、そして首回りの腫瘍を抱えて来院されました。
術前検査(胸部レントゲン、心臓超音波検査等)の結果、聴診にて心雑音が認められ、心拡大を伴う僧帽弁閉鎖不全症(心不全)であることが確認されました。乳腺腫瘍のセオリーで言えば、再発を防ぐための広範囲な乳腺切除(領域切除や全摘出)を検討する場面です。しかし、本症例においては心機能への強い負荷を第一に考慮し、長時間の全身麻酔や、痛みの強い広範囲切除は命に関わると判断しました。
高齢や心臓病を理由に「様子を見る(手術をしない)」という選択をした場合、動物は将来的に以下のような具体的な苦痛を経験することになります。
私たちは外科医として、この「将来確実に訪れる苦痛」から目を背けることはしません。
心臓への負担を最小限に抑えつつ、生活の質を低下させている原因を確実に取り除くため、以下のプロトコルを実施しました。





外科手術には必ずリスクが伴います。本症例において皆様に強く認識していただきたいのが、「術創の舐性(自分で傷を舐めること)」による縫合不全と感染リスクです。
本症例では、ご自宅で術後服を着用せずに過ごしてしまった結果、患者さん自身が乳腺の傷口を舐め壊してしまい、縫合糸が切れ、膿が出る事態が発生しました。患部の細菌培養検査を実施したところ、多くの抗生物質に耐性を持つ多剤耐性菌(セレウス菌)が検出されました。
術後のエリザベスカラーや術後服の着用は、「かわいそう」に思えるかもしれません。しかし、傷を舐めることで耐性菌に感染し、最悪の場合は敗血症など命に関わる合併症を引き起こす危険性があります。動物の命を守るため、術後の患部保護は厳格に守っていただく必要があります。
「高齢だから」「心臓病があるから」という理由だけで、外科的介入を完全に諦める必要はありません。「腫瘍だから全部取る」という画一的な判断ではなく、放置することで生じる将来の苦痛と、手術による負担を論理的に天秤にかけ、その子にとって「最も負担が少なく、最大のメリットが得られる選択肢」をご提案します。
愛犬・愛猫のしこりや手術のリスクについて不安なことがあれば、データに基づいた最適な道筋を一緒に探しましょう。お気軽にご相談ください。
Surgical Approach for Mammary and Lingual Tumors in Elderly Dogs with Heart Disease
This article discusses our logical approach to surgery for a 13-year-old dog with multiple mammary tumors, a lingual tumor, and severe mitral valve disease. Balancing the risk of anesthesia against the inevitable suffering from untreated tumors, we opted for a strategic combination of single mastectomy for the largest mass and local excision for smaller tumors to minimize surgical time and cardiac stress. We also outline our strict post-operative pain management protocol, including remote overnight monitoring, and emphasize the critical importance of preventing self-trauma to the surgical site to avoid multi-drug-resistant infections.
患有心脏病的老年犬乳腺及舌部肿瘤的外科治疗策略
本文探讨了我们对一只患有多发性乳腺肿瘤、舌部肿瘤及严重二尖瓣关闭不全的13岁高龄犬的外科治疗逻辑。在评估麻醉风险与不治疗将导致的必然痛苦后,我们战略性地选择了对最大肿块进行单一乳腺切除,对较小肿瘤进行局部切除,以尽量减少手术时间和对心脏的负担。我们还详细介绍了严格的术后疼痛管理方案(包括夜间远程监控),并强调了防止动物舔舐伤口以避免多重耐药菌感染的极端重要性。