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下部尿路疾患のご飯

大切な家族のための下部尿路疾患(LUTD)の食事管理ガイド

大切なワンちゃん、ネコちゃんのおしっこの回数が多い、色がいつもと違う、そそうをしてしまう…そんな心配な症状は、「下部尿路疾患(かぶにょうろしっかん)」という病気のサインかもしれません。これは、おしっこを溜める「膀胱(ぼうこう)」や、おしっこの通り道である「尿道(にょうどう)」に起こる病気の総称です。ここでは、その原因から、ご家庭でできる食事管理のポイントを解説していきます。

目次
I. 下部尿路疾患の概要と原因
1. 犬と猫の主な原因の違いと割合

おしっこの病気は、ワンちゃんとネコちゃんでは、その原因の傾向が少し異なります。

動物 疾患 割合 解説
膀胱炎 40% 細菌感染を伴うことが多く、特に女の子(雌)は尿道が短く太いため細菌が入りやすい傾向があります。
尿石症 24%
尿失禁 18%
特発性膀胱炎 (FIC) 57% 明らかな原因が特定できない膀胱の炎症。ストレスと濃い尿が大きな発症要因。
尿石症 22%
尿道栓子 10%
2. 猫特発性膀胱炎 (FIC) の管理

原因が特定できない膀胱の炎症であり、発症にストレスと濃い尿が関与します。

  • 臨床症状: 決められた場所以外での排尿、頻尿、血尿など。臨床症状は数日で消退し、不定期な間隔で再発傾向(数週から数ヶ月間隔)。
  • 治療法: 環境改善(ストレス最小化)、尿を希釈し尿量が十分に大きくする。
  • 食事管理: 尿量の増加による尿の希釈(ウェット製品が最もおすすめ)、アンチオキシダント、抗炎症性物質の給与。
II. 尿石症の食事管理(結石別)
尿石って何?2種類のやっかいな石
A. ストルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム)
  • 特徴: おしっこがアルカリ性に傾くとできやすくなる石です。
  • 希望の光: 食事管理によって溶かすことが可能です。
  • 犬の注意点: 症例の70%で尿路感染症を伴い、細菌(ウレアーゼ産生菌)が尿をアルカリ化するため、食事と並行して抗菌剤を投与します。タンパク質制限は状況に応じて検討。
B. シュウ酸カルシウム結石
  • 特徴: 一度できてしまうと食事で溶かすことができません。外科的に除去するしかなく、予防が中心となります。
  • pHとの関係: pHの影響は少ないですが、極端な酸性・アルカリ性の両方で出来やすいです。
  • Mg摂取量: Mg摂取量を減らすと尿中Ca濃度が上昇し、Mg摂取量を増やすと尿中Mg濃度が上昇します。
尿石症の食事管理:3つの黄金ルール

ストルバイトとシュウ酸カルシウム、両方の石のリスクを低くするために共通する食事管理のポイントです。

黄金ルール1:おしっこのpH(ペーハー)を適切にコントロールする

  • 目標pH: 猫: 6.0~6.5、犬: 5.5~6.0。
  • 尿を酸性にする食べ物: リン、含硫アミノ酸(Met/Cys)、塩素。
  • 尿をアルカリにする食べ物: マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、じゃこ、煮干し、のり、ミネラルウォーター(特に硬水)。
  • 注意: 血液のpHは下げずに、尿pHのみを調整する。
黄金ルール2:結石の”材料”となるミネラル(Mg)を制限する

  • ストルバイトの主成分であるマグネシウム(Mg)の摂取量を制限します。
  • Mg摂取推奨量: 成犬 40-100 mg/400kcal、成猫 30-80 mg/400kcal。
  • 絶妙なバランスが鍵: Mgを制限しすぎると、シュウ酸カルシウムのリスクが高まるため、「制限しすぎない」ことが重要です。
黄金ルール3:おしっこの量を増やし、尿を”薄める”(尿量の増加)

  • 総水分摂取量の減少は、尿量低下→尿濃縮度増大→結晶形成の危険性増大につながります。
  • どうやって増やすか: 飲水量を増やす、または消化率の良い食事を与える(消化率の低い食事は糞便中の水分が増加し尿量が減少するため)。
  • 療法食の工夫: 飲水量を促すため、食事中の[塩分/Na]や[ダイエタリーファイバー]を多くしている。
  • 尿量を増やすことで、シュウ酸カルシウムの結晶形成のリスクも減らします。
III. 下部尿路疾患の療法食(製品例)
療法食の具体例

獣医師の指導のもとで与える「食事療法食」は、3つの黄金ルールを緻密に計算して設計されています。

対象動物 治療食(溶解食)の例 維持食(尿石ケア)の例
犬🐶 ユリナリーSO、c/dマルチケア 尿石ケアなど
猫🐱 ユリナリーSO、s/d、ストルバイトケアスターター c/d、ストルバイトケア、尿石ケアなど

IV. 水分・排泄の正常値と管理目標

尿の濃縮を防ぎ、適切な腎機能を維持するための厳密な指標です。

項目 正常値の目安 単位
飲水量 2〜4 mL/kg/h(体重1kgあたり1時間あたり2〜4mL)
尿量 1〜2 mL/kg/h(体重1kgあたり1時間あたり1〜2mL)

この尿量の基準を維持することが、尿の濃縮を防ぎ、LUTDの再発予防に不可欠です。

V. 飼い主さんへの注意事項と病院での管理
A. 食事療法食に関する重要事項
  • この食事は、おしっこを結石(結晶)が溶けやすい(出来にくい)状態にするための食事です。
  • 水をたくさん飲んで、おしっこをたくさんすることで膀胱の中を洗い流します。
  • **⚠️ 塩分が多いご飯なので、慢性腎臓病、心臓病の子には非推奨です。** 療法食開始後も、定期的に血液検査で腎臓病になっていないか確認してください。
  • 尿結石は再発率が非常に高いため、結石(結晶)がなくなってからも、結石ができにくい食事を続けてください。
  • 再発がない子は維持食やS/O indexの表示があるご飯に切り替えても問題ありません。切り替えて再発がないか確認してください。
  • 療法食を食べている間は、おやつに含まれるミネラルが影響するため、おやつはやめましょう。
B. 病院での管理方針と緊急時の対応
  • 療法食への切り替え確認: 当院では石ができて療法食に切り替えてから1週間後に確認します。石(結晶)がなくなっていればそのままご飯を継続し、1〜3ヶ月検診に移行し、定期的に血液検査で腎臓チェックを行います。
  • 皮下点滴の実施: 膀胱炎や飲水量が上がらないときに行っています。お家でも点滴ができるので、飲水量が少ない時、尿が少ししか出なくて何回もトイレに行く時、血尿した時に点滴してもらい、それでも収まらなければ来院してください。
🚨 緊急時の対応(尿道閉塞の恐れ)
全く尿が出ない元気食欲がない吐いているなどの症状があるときは、尿道閉塞の恐れがあるのですぐに来院してください。
C. 今日からできる!食事以外の生活習慣
  • トイレは常に清潔に保ち、ネコちゃんは「頭数+1個」に増やすのが理想です。
  • 水飲み場を複数設置したり、循環式の給水器(ウォーターファウンテン)を試すなど、水を飲ませる工夫をしてください。
  • 肥満は尿石症のリスクを高めるため、肥満防止に努めましょう。
  • 大切なのは、正しい食事と生活習慣を根気よく続けることで、再発を予防することです。
  • どの食事療法食がその子に合っているか、いつまで続けるべきかについては、必ずかかりつけの獣医師さんとよく相談してください。獣医師さんと二人三脚で、愛犬・愛猫の健康を守っていきましょう。