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この記事では、「猫の治療ガイド2020」第17章 感染症で解説されている猫伝染性腹膜炎(FIP)について、専門的な内容も省略せず、分かりやすく解説します。FIPはかつて不治の病とされていましたが、近年の獣医療の進歩により治療に大きな光が差し込んできました。
FIPは、多くの猫が持っている「猫コロナウイルス(FCoV)」が、猫の体内で突然変異して強毒性の「FIPウイルス(FIPV)」になることで発症します。FCoV自体は多くの場合、軽い下痢などを引き起こす程度の弱いウイルスですが、これが変異することで致死率の非常に高いFIPを引き起こします。
FIPは、単にウイルスが増えるだけでなく、そのウイルスに対して猫自身の免疫が過剰に反応してしまう「免疫介在性疾患」です。この過剰な免疫反応が、血管に炎症(血管炎)を引き起こし、全身の様々な臓器にダメージを与えてしまいます。
FIPには主に2つのタイプがあります。
FIPの診断は非常に難しいとされています。これは、FIPに特有の症状というものが少なく、他の病気と見分けるのが困難なためです。
最も確実な診断方法は、病変部の組織を採取し、その中にFIPウイルスが存在することを証明する「病理組織学的検査」ですが、猫への負担が大きいため、通常は複数の検査結果を総合的に判断して診断が下されます。
かつてFIPは有効な治療法がなく、対症療法(症状を和らげる治療)しかできませんでした。しかし、この文献が発行された2020年頃から、ウイルスの増殖を直接抑える「抗ウイルス薬」が登場し、治療に大きな進歩が見られました。
治療の基本方針は、「抗ウイルス薬」でウイルスの増殖を抑え、「抗炎症薬」で過剰な免疫反応を抑えることです。
この文献では、当時(2020年時点)まだ日本では認可されていませんでしたが、治療の選択肢として海外の臨床試験で効果が報告された以下の薬が紹介されています。
| 薬の名前 | 投与量・方法 | 概要 |
|---|---|---|
| GS-441524 (ヌクレオシド・アナログ) |
4 mg/kg、皮下注、1日1回 | FIP症例猫26頭中18頭の猫に治療効果があった。少なくとも12週間投与。 |
| GC376 (3C様プロテアーゼインヒビター) |
15 mg/kg、皮下注、1日2回 | FIP症例猫26頭中20頭の猫に治療効果があった。非滲出型(ドライタイプ)には効きにくい。 |
| クロロキン | 10 mg/kg、皮下注、3日に一度 | 実験的な症例において3頭中2頭の猫に症状の改善および延命効果があった。 |
これらの薬は、治療の第一選択肢として考えられると記載されています。
抗ウイルス薬と並行して、以下の薬が使われることがあります。
FIPを発症した猫の予後は、以前は絶望的でしたが、抗ウイルス薬の登場によって大きく改善しました。治療にうまく反応すれば、寛解(症状が落ち着いた状態)に至る可能性があります。しかし、治療がうまくいかなかったり、重度の神経症状があったりする場合には、予後は依然として厳しいです。
最新の情報や実際の治療については、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。